「馬を襲うジャガー」 アンリ・ルソー 1910年 90×116cm
アンリ・ルソー(1844 - 1910)の最晩年の作品である。
ルソーは、50代で税官吏を辞めるまでは日曜画家であった。多くの名作を残しているが、それは退職後に描いた作品のようである。40代で家業を弟に継がせて絵描きになった伊藤若冲のように、プロとしては遅いスタートとなっている。
しかし、ルソーの作品世界は日曜画家では到達できない高見にある。それが証拠に、オルセー美術館やニューヨーク近代美術館をはじめ、世界中にルソーの作品は所蔵展示されている。日本でもそれは例外ではない。
彼の題材で多く取り上げられているのが、ジャングルを描いたもので、プーシキン美術館のこの一作も実にユニークな雰囲気を持っている。
ジャガーの顔は見えなくて、馬がジャガーを襲っているようにも見えるが、ショッキングなモチーフがいつも中央にある。例によって樹木の葉っぱのタッチはのっぺりと色付けされているのにふっくらと立体的で、輪郭はあくまでもくっきりで、ルソーのスタイルがこの構図とタッチである。