遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

放牧三馬/坂本繁二郎

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 放牧三馬 坂本繁二郎  1932年 油彩 80×99cm  ブリヂストン美術館

「二科100年展」から、坂本 繁二郎(さかもと はんじろう、 1882年-1969年)の作品のご紹介。

久留米生まれで、幼いころから神童とうたわれた坂本。なんと、同郷で同年で同じ小学校の同級生に天才青木繁がいる。当時久留米には、神童と天才が同じ小学校にいたことになる。
青木は、16歳で上京して後に東京美術学校黒田清輝に師事した。しかし、坂本は上京が叶わず、地元で美術の代用教員をしていたという。

20歳のころ、一時帰郷した青木の作品を見た坂本は刺激を受け、上京して画塾「不同舎」で小山 正太郎に師事した。
フランス留学から帰国した坂本は、郷里・久留米へ戻り、その後八女に移住。馬を本格的に描き始めるのもその頃で、坂本は気に入った馬を探して九州各地に出かけたという。

二科100年展では、坂本の作品「海岸の牛」(1914)に、まず目を奪われる。なぜか浜辺にいる牛一頭を大きく描いた作品で、牛のフォルムは写実的なのだが、全体的な色調はパステルタッチで個性的な作品である。坂本は二科会の創立に参加し、第1回展でこの作品を出品している。
年代順に並べられた作品を順路に沿って見ていくと、「帽子を持てる女」(1923)に出会う。ああ坂本という画家は人間をモデルに描くようになったのかと思わせた。淡い色使いは変わらず、女性の表現は印象的にデフォルメされている。

そして最後の方の展示室で、この「放牧三馬」(1932)が目の前に現れる。「ああこの絵知ってる」と膝を打った(つもり)。ブリヂストン美術館蔵だからネットで見たことがあるのか、教科書に載っていたのか、何かの機会に目にしたのかよく覚えていないが、この作品が放つエネルギーが記憶にとどまる力を持っているのだろう。

阿蘇山にスケッチに行きアトリエで仕上げた馬の絵だという。色調の個性は、相変わらず坂本独特のもので、真ん中の白い馬の素朴なフォルムが私たちの脳裏から去ることのない力を帯びている。

「伝説の洋画家たち 二科100年展」 
大阪展      ~11月1日まで 大阪市立美術館で開催中
福岡展 11月17日~12月27日まで 石橋美術館(久留米市)で開催