上の写真は、私のブログで何度か紹介したことがある。
長崎に投下された原爆で亡くなった弟を背負って、直立不動で火葬の順番を待つ少年を撮影したもの。
この写真を撮ったのは、ジョー・オダネルというアメリカの従軍カメラマンだった。
オダネルの目の前で、この少年は弟の遺体が焼かれはじめたのを見届けて、きびすを返して走ってその場を離れていったのだそうである。涙も見せず一声も発せず、少年はオダネルのいるその場から、走り去って行ったそうである。
2017年の年末に、ローマ法王はこの写真入りのカードを協会関係者に配布したそうだ。法王が年末にカードを配布するのは異例で、「核なき世界」を訴えてきた法王が出した強いメッセージと受け止められている。
ローマ法王、長崎原爆後の写真「焼き場に立つ少年」配布
撮影者のオダネルが、晩年この少年を長崎に探す旅のドキュメンタリーを見たことがあるが、この少年に会うことはできなかった。この弟をなくした少年が生きておられたなら、80代半ばくらいか。ご自身も被爆されているだろうから、その後の人生はいかばかりだったろうか。
この少年に会うことは叶わなかったオダネルは、のちに長崎で写真展を開催した。その会場で、子どもを抱っこして少年の肖像を見ていた若い母親は、この写真の前でしばらく立ち尽くして涙を流し続けていた。
ローマ法王であろうが名もなき普通の市民であろうが、戦争や核を憎む心に変わりはない。この写真を見て流される涙は乾くことはない。