遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

藤田嗣治の2つの風景画

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「生誕130年記念 藤田嗣治展-東と西を結ぶ絵画-」(兵庫県立美術館 会期9月22日まで)から、風景画のご紹介。

左の作品は、「レ・ゼジ」 1939年 38.3×46.5㎝ ランス美術館

右が、「ノートルダム=ド=パリ、フルール河岸」 1963年 36.5×45㎝ ランス美術館

どちらも8号サイズ程度の、小さいサイズのキャンバスに描かれています。もちろん、キャンバスのサイズとその作品の価値は無関係です。

「レ・ゼジ」は藤田53歳頃の作品。もっと若い頃の藤田の作品同様、のっぺりとした雰囲気で、モチーフが温かいノスタルジックな風景なのに、日の光を感じない、しかし決して情感がないわけではなく、こういう柔らかいタッチが私は好きです。のっぺり感が、キャンバスの隅々にまで目が届く効果をもたらしているような気がします。

一方「ノートルダム=ド=パリ、フルール河岸」は、人物の配置もない建物を大きくとらえた作品ですが、やわらかい日の光が感じられて、佐伯祐三を端正にした感じもします。このころ、藤田は76歳くらいになっていましたから、色気のないストレートな画風になっていたのかもしれません。この界隈は藤田が好んで描いたということのようです。

以上、藤田展の作品紹介シリーズはこれでおしまいにします。