遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

五人の裸婦/藤田嗣治

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「五人の裸婦」 1923年作 169×200㎝ 東京国立近代美術館所蔵

藤田嗣治展」から、彼の代表作のひとつ「五人の裸婦」のご紹介。
制作されたのは1923年(大正12年)で、藤田の渡仏から10年が過ぎてる。

彼は渡仏後さまざまな人と交流し、その間に自分のスタイルを確立していった。今回の展覧会にも初期の作品があるが、アフリカ美術に影響を受けた、まるでモディリアーニのような作品もあった。事実、彼はモディリアーニと交流し、アフリカ美術の模写を熱心に行っていた時期もあったという。

「五人の裸婦」は、すでに藤田のお家芸ともいうべき「乳白色の肌」の描写技法を確立していた時代の作品で、彼の地位もパリの画壇で確立されていた。裸婦たちの乳白色の肌は、ごくごく細いなめらかな輪郭線に縁どられていて、どこにもないユニークな世界がここにある。

さまざまなポーズの5人の女性、艶やかなベッドカバー、渋い色の天蓋、犬、猫、カラフルな敷物、木質の床、そして漆黒の闇のような壁が、大きなキャンバスに絶妙のバランスで配置されている。

藤田には省略していく表現はなく、いろいろなものを追加していく方向にある表現者なのだと感じいる。本作、普段は東京の国立近代美術館にあることに安堵する。