遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ラス・メニーナス/ベラスケス

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作者 ディエゴ・ベラスケス( 1599 - 1660年)
制作年 1656年
素材 油彩
寸法 318 cm × 276 cm 

ディエゴ・ベラスケスは、バロック期のスペインの画家。一時期フランスからスペインへ逃避していたマネが「画家の中の画家」と呼んだベラスケスは、スペイン絵画の黄金時代であった17世紀を代表する巨匠であった。

1623年、国王フェリペ4世の肖像画を描き、国王に気に入られてフェリペ4世付きの宮廷画家となり、以後30数年、国王や王女をはじめ、宮廷の人々の肖像画、王宮や離宮を飾るための絵画を描いた。

晩年にベラスケスが描いた「ラス・メニーナス」は、彼の代表作である。
中心にいる少女が、5歳のマルガリータ王女で、周りに女官たちが王女の世話のために取り囲む。タイトルの「ラス・メニーナス」とは「女官たち」という意味である。

画面左のパレットを持った画家は、ベラスケス自身であり、本作は自画像の要素も持つ。
よく見るといちばん奥の壁に掛かる鏡には、王女の両親であるフェリペ4世と王妃が映っている。この作品は、その国王の見た目線で描かれている。

ベラスケスは、終生王家を描いた。画家で官僚という恵まれた身分であった。恵まれていたからこそ、何不自由なく作品を残せた。「ラス・メニーナス」のように、王家を描いているのも関わらず、「遊び」の要素もある作品が残せるほど恵まれた身分であった。

しかし、このような天才が半ば拘束されたお抱え絵師だったことは、ある意味残念なことでもあったといえる。ダビンチやミケランジェロのように自由の身であればどんな作品を残していただろうかと思わずにはいられないのである。

この歴史的名作は、マドリードプラド美術館で私たちを待っている。