監督 小津安二郎
出演者
配給 松竹
公開 1962年11月18日 上映時間 113分
笠智衆は、娘の世話を受けて平穏な日々を暮らしている。しかし、娘の幸せのことを考えると、そろそろ嫁に出す時期かなあ、寂しくなるなあ、などと考え出す。
笠の恩師の東野栄治郎は、教職を退いてからなぜかラーメン店を営んでいる。店を手伝う行き遅れた娘の杉村春子を見て、笠は娘の縁談話を進めようと決心する。
1962年(昭和37年)の、東京の中流階級の人々の生活を描いた作品で、時代がよく映し出されている。佐田啓二は、知り合いの中古のゴルフクラブを10回払いの2万円で手に入れ、電気冷蔵庫を購入するため父親に5万円を借りる。
ただ、妻に先立たれた中年男が、世話をしてもらっている娘が嫁いで不安になるといったところは、今の夫たちの立ち位置と大差ないかもしれない。
唯一、笠だけが優男(やさおとこ)でおいしいところを独り占めしている。
先にキャスティング有りなのかもしれないが、俳優たちはどんな役どころを命じられても、笠智衆はやさしいおじさん、中村伸郎は意地悪爺さん、加東大介は元気なテカテカおじさん、東野栄治郎は飲んだくれの不幸な親爺、杉村春子はうるさ型のおばさんという印象が定着している。この現象は、黒澤映画でさえ同じなのが不思議で、彼らの個性のなせるところなのだろう。
いずれにせよ、野田高梧と小津の脚本は、人々の暮らしを小津映画のカメラ位置のように低い目線でじっくりととらえている。
2人の脚本のせいか小津の演出の影響か、俳優たちのなんだか棒読みのようにも聞こえるセリフ回しが印象的だ。敢えて抑揚をつけずに、完成のための色付けを見るものに任せたような、透明感のある絵画のように個性的である。