遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

道/フェデリコ・フェリーニ

イメージ 1

脚本 フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ
出演者 アンソニー・クインジュリエッタ・マシーナ、リチャード・ベイスハート
日本公開 1957年5月25日   上映時間 104分

天下の名作フェデリコ・フェリーニの「道」のご紹介。私は若いころから、テレビで何度か観ていて、このたび最高画質版でテレビ録画鑑賞。

貧しい家庭に生まれたジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、口減らしのために1万リラで大道芸人ザンパノ(アンソニー・クイン)に売り飛ばされる。そこから二人のロード・ムービーが始まる。

いかさま芸のようなことしかできないザンパノは、酒癖が悪く喧嘩っ早く粗野で下品の大安売りがお得意。
一方、知的障害があるジェルソミーナは、料理もできず大道芸はおぼえたてで、ザンパノが運転するオートバイで引かれる荷車のなかで生活をする。ふたりはすぐに女と男の関係になるのだが、心は通じ合わないまま旅を続ける。

主演のジュリエッタ・マシーナは、実生活ではフェリーニ監督の妻。彼女は撮影当時の年齢は32歳。私が若いころに本作を見たときには感じなかった、ジュリエッタ・マシーナ演ずるジェルソミーナのチャーミングなこと! 小さくてひょいひょい歩くさまは、まるでチャップリンのようでもあり愛らしい。ひとり微笑む顔やつかの間の幸せにひたり眠りに落ちるときの幸せそうな顔は、まるで天使のように輝く。

イタリアのネオ・リアリズム映画のお手本のように、貧しくて寒くてやるせない本作は、後年の前衛的な実験的なフェリーニ作品と一線を画す正統派作品で、観客の誰でもがすんなりと入ってゆける世界を創り出している。

ハリウッドから招へいしたアンソニー・クインとリチャード・ベイスハートも、フェリーニの期待に大いに応えたダメ男ぶりで、マシーナを加えた3人を通して私たちに問いかけた原罪のようなものが、重く心に残る。
すべての観客に愛されるジェルソミーナなのに、目の前の一人の男にすら「愛している」と言ってもらえない哀愁が、ニーノ・ロータの音楽で増幅される。

本作は、1956年のアカデミー外国語映画賞を受賞。キネ旬の外国映画オールタイムベスト100(1999年)では7位にランクされている。 フェリーニ!