監督 フェデリコ・フェリーニ
脚本 フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ
音楽 ニーノ・ロータ
日本公開 1957年5月25日 上映時間 104分
天下の名作フェデリコ・フェリーニの「道」のご紹介。私は若いころから、テレビで何度か観ていて、このたび最高画質版でテレビ録画鑑賞。
いかさま芸のようなことしかできないザンパノは、酒癖が悪く喧嘩っ早く粗野で下品の大安売りがお得意。
一方、知的障害があるジェルソミーナは、料理もできず大道芸はおぼえたてで、ザンパノが運転するオートバイで引かれる荷車のなかで生活をする。ふたりはすぐに女と男の関係になるのだが、心は通じ合わないまま旅を続ける。
主演のジュリエッタ・マシーナは、実生活ではフェリーニ監督の妻。彼女は撮影当時の年齢は32歳。私が若いころに本作を見たときには感じなかった、ジュリエッタ・マシーナ演ずるジェルソミーナのチャーミングなこと! 小さくてひょいひょい歩くさまは、まるでチャップリンのようでもあり愛らしい。ひとり微笑む顔やつかの間の幸せにひたり眠りに落ちるときの幸せそうな顔は、まるで天使のように輝く。
イタリアのネオ・リアリズム映画のお手本のように、貧しくて寒くてやるせない本作は、後年の前衛的な実験的なフェリーニ作品と一線を画す正統派作品で、観客の誰でもがすんなりと入ってゆける世界を創り出している。
すべての観客に愛されるジェルソミーナなのに、目の前の一人の男にすら「愛している」と言ってもらえない哀愁が、ニーノ・ロータの音楽で増幅される。