遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ゼロ・グラビティ/アルフォンソ・キュアロン

イメージ 1

音楽 ティーヴン・プライス
編集 マーク・サンガー、アルフォンソ・キュアロン
日本公開 2013年12月13日  上映時間 91分

ストーリーはいたってシンプル。米国はスペースシャトルの乗務員のサンドラ・ブロックジョージ・クルーニーが船外活動中に事故が起こり、スペースシャトルは破壊される。宇宙空間に取り残された彼らは、はるか遠くに浮かんでいるロシアの宇宙船ソユーズにまで到着できれば地球に帰還できるかもしれない…。ごくかいつまんで言うと、そのような91分のスペースドラマである。

出演者はサンドラ・ブロックジョージ・クルーニーだけと言って差し支えない。ふたりとも訓練を受けたスペースシャトルの乗組員で、危機管理訓練を受けており、他国の宇宙船も操縦できるはず。サンドラ・ブロックはまだしも、ジョージ・クルーニーが宇宙にいるというのが違和感があるが、それを我慢できるほど観客である私たちも素晴らしい宇宙遊泳・旅行ができる作品である。(上の画像はなんだか水中にいるように見えるが、地球をバックに船外活動をするブロックとクルーニーである。)

カメラは、固定された視点で宇宙でバランスを失った主役たちを客観的に撮影するかと思えば、遊泳者の目と同じ動きで宇宙で回転・回遊する。時にはカメラは、飛行士のヘルメットのなかにまで移動したりと縦横無尽に活躍する。その発想と視覚効果が素晴らしい。そしてカメラがとらえる宇宙ステーションや宇宙船や青い地球や猛烈な勢いで流れて行く宇宙ゴミなどの映像美に感嘆する。

また、無重力の宇宙船内の人間の動きが(あたりまえだが)まるで無重力空間のなかにいるようになめらかで感嘆する。私たちは借りてきたDVDでの鑑賞だったが、大スクリーンの劇場で見れば迫力のある映像であろう。貧弱なうちのテレビモニターでの鑑賞でも、めまいを覚えるほどの特殊映像だった。

どのようにしてこのような映画が作れるのか…想像を絶する。

上映時間が比較的短いながら、この作品の製作費は1億ドル!だった。さもありなんの特撮であった。全世界での興行収入は7億ドルを超えた。さもありなんの、国境のないエンターテイメントだった。

ゼロ・グラビティ」は、第86回アカデミー賞で、監督・作曲・音響編集・録音・撮影・視覚効果・編集の7部門でオスカー像を獲得した。さもありなん。