遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マイノリティ・リポート/スティーヴン・スピルバーグ

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『少数報告』
出演者
日本公開  2002年12月7日
上映時間  145分


引き続き、2000年代の映画の紹介で、今回はスピルバーグ監督の「マイノリティ・リポート」。

この作品、製作費は何と1億ドル。舞台は2054年の近未来なので、いろいろな仕掛で製作費が嵩んだとみられる。製作費をかければいい映画ができるわけではない。前回紹介の「メメント」の製作費が9百万ドルなので、製作費の差は大きいが作品の価値の差はそれとは無関係である。

主演はトム・クルーズ。犯罪予防局の刑事のトムクルーズは、最新鋭のシステム「殺人予知システム(以下「システム」とあらわす)」による殺人防止チームのリーダー的存在。「システム」が「殺人が起きそうだ」と予知するや否や、トムクルーズがいち早く現場に駆けつけ殺人を阻止するという設定。その働きぶりたるやすごいもので、絶対に殺人事件を未然に阻止するという気概がすさまじい。そのおかげで、2054年のワシントンDCの殺人事件発生率は0%に留まって久しい。

トムクルーズ刑事が職務に忠実なのは訳ありで、6年前に自分の息子を誘拐され殺害されているからである。そして、その犯人が特定されないままになっている。その謎と、「システム」の完璧さを補うために捨て去られる「マイノリティ・リポート(少数意見)」をめぐって、刑事トム・クルーズは、任務を離れて独自の捜査を始める。この捜査活動が、アクションあり謎解きありのサスペンス活劇で重厚感がある。

トム・クルーズ主演で言えば、「ミッション:インポッシブル」ほど軽快なエンターテイメント性はないものの、入り組んだ原作をおそらく忠実に描いたであろう「システム」をめぐる謎解きエピソードは、マニアックな映像でよく表現されている。ただし、2054年の未来にすでに憧れはなく、もう相当「未来」に慣れ暮らしている私たちを驚かせようとする仕掛けなどはどこか嘘っぽい。唯一「システム」の中核や「マイノリティ・リポート」のありかがアナログなところがほっとしたりする。

戦争による国家間の殺人は、0%にしなければならないのは言うまでもないが、個人的な殺人事件発生率を0%にキープする世界はユートピアではなく、プライバシーも自由もないディストピアに思えるところもなんだか皮肉である。

お暇ならご覧あれ、面白い。