遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

リターン・トゥ・フォーエヴァー/チック・コリア

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1972年、19歳の私、発売間もないチック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を、
初めてのジャズレコードとして購入、盤が擦り切れるくらい聴いていた。

2012年、それから40年後の秋、CD(数年前に購入)で鑑賞。
CDは擦り切れないが、30回程度朝昼夜関係なく集中して鑑賞。

マイルス(・デイヴィス)チルドレンのひとりでもあるチック・コリアが、
ひとり立ちして、エレクトリック・ピアノで新しい音楽を始めた証左がこのアルバムに収められている。

いま聴いても、まだジャズに出会ったばかりの19歳の頃の私のような気持ちになれるのは、
大海原の上空を滑空する白い鳥のような気分になれるのは、気のせいではなく、このアルバムのせいである。

スタンリー・クラークの超絶技巧エレクトリカル・ベースが、個性を際立たせている。
コリアの電子ピアノとの相性も素晴らしい。
この、デジタル音楽に命を宿らせた二人のサウンドに加えて、
ジョー・ファレルのアコースティックな木管金管の響きが、今も新しい。
3人それぞれに、長いインプロヴィゼーション(即興演奏)がちゃんと用意されていて、
そのあたりは、ジャズの神髄が楽しめる。

若い頃うっとりとして聴いていた、フローラの歌声は、相変わらず澄んでいて素晴らしい。
しかし、齢重ねて摺れて来た感性の前には、さしもの歌姫の歌唱、ややぶっきらぼうに心なしか能天気に聴こえる。

チック・コリアは今も昔も、紛れもないジャズ・ジャイアンツだが、
この「リターン・トゥ・フォーエヴァー」は、垣根のない万能音楽である。



■パーソネル
チック・コリア(el-p)
ジョー・ファレル(fl,ss)
フローラ・プリム(vo,per)
スタン・クラーク(el-b,b)
アイアート・モレイラ(ds,per)

■収録曲
1. リターン・トゥ・フォーエヴァー
2. クリスタル・サイレンス
3. ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ
4. サムタイム・アゴー~ラ・フィエス

■録音 1972年2月 ニューヨーク