遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

おおきなかぶ/佐藤忠良・内田莉莎子


父親の介護関連ケア・マネージャーさん。
年齢不詳の女性らしいが、60歳になるかならぬかといった世代の方だそうで、
250ccのバイクで我が家に来られる。
先日の土曜日のこと、そのマネージャーさん、訪問を終えてバイクにまたがり帰ろうとしたら、
バイクのスタンドが我が家の溝のグレーチングに引っかかり抜けなくなったという。

わが妻も助っ人したがラチがあかなく、次女も応援に行ったがだめで、
ちょうどジョギング帰りの向かいのお兄さんがもう一汗流してくれ、
さらに向かいのお兄さんのお父さんも出てきてくれて、
ようやくグレーチングからスタンドの先が抜け、マネージャーさんは帰路につかれたという。
 
釣りから帰ったら、不在で役立たずの私に、妻がその一部始終を語ってくれる。
大変だったという話と、向かいのお兄さんはよく見るとかなりのイケメンで、
次女がすっぴんで飛び出したので残念がっていたというおまけまでついた一部始終だった。

その大変だった一部始終話を聞いて、まるで「おおきなかぶ」のお話だなと連想してしまった。
おさむお兄さんとゆう子お姉さん(うちの子供たちはこの二人の歌で大きくなりました)の
「おおきなかぶ」の歌まで脳裏に浮かんできてしまった。

「おおきなかぶ」の絵本で有名なのが、1966年に福音館書店から刊行された一冊。
絵は、高名な彫刻家にして女優佐藤オリエの父である去年亡くなられた佐藤忠良
一目でロシアの農民と分かるクラシカルでカラフルで丁寧な絵が、素晴らしいと思う。
 
そして、もうひとつ素晴らしいのが、翻訳の内田莉莎子の日本語。
「うんとこしょ、どっこいしょ。まだまだカブはぬけません。」このリズム感のある一行が、
ドラマチックで少しミステリアスで、子どもたちの想像力をかき立てるような気がする。
上の映像での読み聞かせの女性も、さらっと上手なお方である。
 
刊行から半世紀近く経っても、「読んで」とせがまれる1冊になっているという。
この絵本のお世話にはならなかったが、
私もこの「おおきなかぶ」の話が大好きな子どもだったことを憶えている。