遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

天然色でパリを撮る/木村伊兵衛

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NHKのEテレで1月に放送のあった「日曜美術館」「木村伊兵衛 天然色でパリを撮る」を鑑賞。

1955年、木村伊兵衛は、まだ一般的ではなかった国産のカラーフィルム50本を託されパリに飛んだ。
そのフィルムは、富士フイルムから1948年に発売されてはいたカラーフィルムで、
感度はASA10(今の表示ではISO10)で、多くの光を必要とする低感度フィルムである。
後世の我々は100や400の感度のものを一般的に使用していたから、感度は相当低い。

その国産カラーフィルムの特性を試すべく、アフリカからヨーロッパをめぐったそうで、
なかでも木村伊兵衛のお気に入りはパリだったという。
その仕事は朝日新聞社から今も出版されている「木村伊兵衛のパリ」に詳しい。

パリの撮影をお膳立てしてくれたのは、旧知のアンリ=カルティエブレッソンと、
ロベール・ドアノー(現在、東京都写真美術館で「生誕100年記念写真展」開催中)のふたり。
木村は嬉々としてパリの街を撮影したようだ。
日曜美術館」でそんなエピソードや木村の作品の多くを伝えてくれていた。

上記画像は、その番組より天然色のパリ4枚。テレビの画面を撮影したものである。
柔らかな発色と、商業ポスターのように日常のパリを切り取った名品である。

左下の店内の老人の持つステッキの横に、ウィンドーに映る木村伊兵衛の足を発見!
上へたどると老人の帽子の少し上に、ベレー帽で撮影中の上半身もうかがわれる。

感度の低い黎明期の国産のカラーフィルムとライカのレンズファインダーカメラと、
木村伊兵衛の目と頭と右手の人差し指の共同作業を楽しまれたい。