木村伊兵衛 パリ残像
1954年、富士フイルムから委託されて木村伊兵衛(写真家1901 - 1974)は開発されたばかりの和製カラーフィルムを50本携えて、エジプトとパリに飛んだ。木村ははじめての海外経験だった。
その時のパリの風景と人々を収めたのが「パリ残像」。
大判書籍は廃版でポケット判になっている写真集「木村伊兵衛のパリ」という写真集もあるが、そこから再編集されたもののようだ。
パリ自体がけばけばしいところのない街だが、木村が当時持たされたカラーフィルムはISO10の低感度だから、日中の屋外でも落ち着いた色合いの写真集になっている。
表紙は、ノートルダム寺院の高いところからエッフェル塔を望む風景だが、終戦後ほぼ10年経った木村伊兵衛が切り取ったパリの街はいまとほぼ同じだ。(当のノートルダム寺院だけはそうではないが...)活気があり美しいし、パリっ子は幸せそうだ。楽しい人生を、終戦が増幅させたのかもしれない。
木村伊兵衛とライカが、パリで気圧されることなくいい仕事ができた証左がここにある。絵葉書のような写真は1枚もない。