遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

諸国食物名物番付

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和歌山有田は湯浅の熊野古道をぶらぶらしていたら、

みかんが名物のご当地だからなのだろう、

西の大関に「蜜柑(紀州)」が名を連ねる面白い番付が掲げてあったので、

パチリと撮ってみた。

大正7年の「諸国食物名物番付」とあった。


今から92年も前の日本全国各地のグルメ番付で、

東西の横綱宇治茶」と「灘の清酒」にはじまり、

別格扱いの行司・取締・勧進元にいたるまで、

隅から隅まで、諸国の美味しいもの名物がずらりと並んでいる。

今なら「からすみ」の名産地は長崎だが、この番付では高知となっているし、

また、守口大根は大阪の守口だけの特産品だと思っていたら、

当時も今も、岐阜県の方が名産のようである。

それらの例外は別として、92年経った今も、各地の名産品はほぼ健在で、喜ばしい。


うちの奥さんの九州のお友だちが、先だって恒例の関西旅行に来られて、

今年は奈良にぜひ行ってみたいという事で、

京都と奈良の紅葉とグルメを、二人でたっぷり楽しまれたようで、

留守番の私には、好物の「奈良漬」を買ってきてくれた。

私は、東大寺の参道にある有名なお店の奈良漬が好きなのだが、

奥さんが買ってきたのは別のお店の製品で、私には少し物足りなかった。

たぶん、私のお気に入りの店の奈良漬の味は、大正の昔から変わっていないのだろうな。


この番付に並んだ、海の幸、山の幸から、飴や餅や煎餅や饅頭のようなお菓子類の加工品まで、

この国の人は美味しいものがよく分かっていて、大事にしてきたことがよくわかる。

だからいまなお、各地の名産品が明治や大正時代と変わらずに生存しているのである。

100年前には、簡単に手に入らなかった物もあろうが、

飽食の時代を経てグルメ大国となって久しい日本は、いつでも旬の状態で口に入れることが出来る。

問題はこれからの100年。

この番付からどれが生き残ってくれるのだろうか。


     諸国食物名物番付

   横綱 宇治茶(山城・京都)         
      灘の清酒(摂津・兵庫)
   大関 葡萄 (甲府・山梨)
      蜜柑 (紀州・和歌山)
   関脇 伊勢海老 (伊勢・三重)
      興津鯛  (駿河・静岡)
   小結 仙臺(台)味噌 (陸前・宮城)
      高野豆腐  (紀伊・和歌山)
   前頭 山葵(わさび)漬 (静岡)
      濱納豆  (濱松)
      ころ柿  (甲斐・山梨)
      牡蠣   (廣島)
      玉川の鮎 (武蔵・東京)
      佃煮   (東京)
      鯛味噌  (明石)
      松茸    (京都)
      寒天   (信濃・長野)
      吉備団子 (岡山)
      沢庵漬  (東京)
      千枚漬  (京都)
      鷺しらず (京都)
      平家蟹  (長門・山口)
      日光羊羹 (日光・栃木)
      姥ケ餅  (草津・滋賀)
      鳴門若布 (阿波・徳島)
      守口大根 (岐阜)
      養老酒  (大垣・岐阜)
      桑酒   (加賀・石川)
      牛肉   (神戸)
      ハム   (鎌倉)
      氷    (函館)
      そば粉  (信濃・長野)
      栗羊羹  (成田・千葉)
      瓦煎餅  (神戸)
      聖護院八橋(京都)
      羽二重餅 (福井)
      朝鮮飴  (熊本)
      柚(ゆ)べし(琴平・香川)
      越の雪  (越後・新潟)
      鮎寿司  (山北・神奈川)
      鯛飯   (静岡)
      わかさぎ (土浦・茨城)
      赤福餅  (山田・三重)
      饅頭   (大阪)
      梅羊羹  (水戸)
      瓦煎餅  (  )
      鮑粕漬  (伊勢)
      鮎の粕漬 (岐阜)
      喜楽煎餅 (横浜)
      湯の花菓子(別府)
      黒柿   (山形)
      串柿   (丹波・兵庫)
      若狭かれい(敦賀)
      時雨蛤  (伊勢)
      雲丹(うに) (因幡・島根)
      からすみ (高知)
      晒飴   (小樽)
      御所落雁 (金沢)
      筍    (山科・京都)
      人参   (出雲)
      林檎酒  (弘前)
      みりん  (桃山・京都)
      素麺   (播磨・兵庫)
      白玉粉  (新潟)
      芝川海苔 (駿河・静岡)
      干瓢   (下野・栃木)
      翁飴   (塩原・栃木)
      水飴   (多摩)
      栗漬   (千葉)
      帆立貝  (青森)
      昆布   (釧路)
      久慈良餅 (陸奥・青森)
      磯部煎餅 (上野・群馬)
      坊太郎餅 (丸亀・香川)
      源平餅  (長野)
      無花果餅 (新発田・新潟)
      杏羊羹  (高松)
      こぼれ梅 (二日市・福岡)
      千歳飴  (久留米)
      子持雑魚 (大分)
      浪子饅頭 (逗子)
      長生飴  (長門・山口) 
      熨斗梅  (山形)
      玉あられ (豊橋・愛知)
      鮎うるか (人吉・熊本)
      利吉煮  (大分)
      さざれ石 (大磯・神奈川)
      ささらぎ (岡崎・愛知)
      蛤    (住吉・大阪)
      貝煎餅  (千葉)

   行司 秋田蕗(ふき) (秋田)
      砂糖   (台湾)
      尾張大根 (尾張)
      醤油   (銚子・千葉)
      薩摩芋  (鹿児島)

   取締 浅草海苔 (東京)
      粟おこし (大阪)

   勧進元 かすていら (長崎)
       栗めし   (目黒)
       奈良漬   (奈良)
       うどん   (神戸)
       松茸    (姫路)

   大正七年三月(1918年3月)
   東京市麹町区土手三番町三十四番地 娯楽画報版元
   大正通信社