遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

チェンジリング/クリント・イーストウッド

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「人生は自由で美しく、素晴らしいものだ」と、

チャップリンは「独裁者」の中で主人公を通して世界に発信した。



でも、この「チェンジリング」と同様のテーマが扱われている。


時は1928年、クリント・イーストウッドが生まれる2年前のことである。

アンジェリーナ・ジョリーが扮する電信局で働くキャリアウーマンの、

一人息子が行方不明になってしまう。

悲しみにくれるアンジェリーナに、行方不明になってから数ヵ月後に、

息子が見つかったとの知らせが警察から舞い込む。

しかし、彼女の元に帰ってきた少年は、彼女の息子ではなかった。


ロスアンジェルス警察は、自らの捜査能力の欠如から来る焦りで、

アンジェリーナの息子だと申告した少年の言葉を、そのまま鵜呑みにしてしまう。

さらに警察当局は、見つかった少年はわが子ではないと断固言い張る母親を、

精神的な病気を持つ患者だと決め付けて、病院へ強制的に送り込んでしまうのである。


子どもを取り替えられてしまい(チェンジリング)、

精神科の入院病棟へ強制的に送られたアンジェリーナ・ジョリーは、

自分はもちろん、病棟内の自分と同じ立場の女たちをも救済しようと立ち上がるのである。


恥ずかしいことに、情けないことに、エンドロールではじめて、

私はこの作品が、クリント・イーストウッド作品だと知った。

いつもの、金をかけないイーストウッド作品とは一線を画し、

1920年代のアメリカがよく再現されていた。


この作品は、80年以上も前の、アメリカでの実話をベースにしたものであるが、

今日のわが国においても、警察や検察から貼られたレッテルで、

一度しかない人生が狂ってしまうことだってありえるのだ。


絶え間なく私たちの前に、立ちはだかる障壁を排除するには、

少しの賛同者と少しの勇気と少しの時間が必要なのである。

チャップリンの言う、自由で美しく素晴らしい人生を生きようとするなら、

そのことを分かっている必要があるのである。