遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

朝のリレー/谷川俊太郎

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     「朝のリレー」谷川俊太郎


   カムチャツカの若者が

   きりんの夢を見ているとき

   メキシコの娘は

   朝もやの中でバスを待っている

   ニューヨークの少女が

   ほほえみながら寝がえりをうつとき

   ローマの少年は

   柱頭を染める朝陽にウインクする

   この地球では

   いつもどこかで朝がはじまっている


   ぼくらは朝をリレーするのだ

   経度から経度へと

   そうしていわば交替で地球を守る


   眠る前のひととき耳をすますと

   どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる

   それはあなたの送った朝を

   誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
 


画像は、朝日の中のナミブ砂漠です。


前夜には、0度の地平から立ち上がった満天の星に感動して、

たぶん翌日から世界観が変わることを確信して眠りに落ち、

そして目覚めたとき、

このアプリコット色の砂漠は、チャーミングなたたずまいで、

朝の旅人を迎えてくれるようです。


サソリが大好物のミーアキャットも、朝食の手を休めて、

みなお揃いで歓迎してくれるようです。








   Poem “Morning Relay” by Shuntaro Tanigawa

   While a young man in Kamchatka
   Dreams of a giraffe

   A young girl in Mexico
   Waits for the bus in the morning haze

   While a little girl in New York
   Rolls over in her bed with a smile

   A little boy in Rome
   Winks at the morning sun that colors the column capital

   On this Earth
   Always, somewhere, morning is starting

   We are relaying morning

   From longitude to longitude
   Taking turns protecting Earth, as it were

   Prick up your ears awhile before you go to sleep
   And, somewhere, far away, you’ll hear an alarm clock ringing

   It’s proof that someone has firmly caught
   The morning you’ve passed on