遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

アメリカン・ビューティ/サム・メンデス

イメージ 1

アメリカン・ビューティ AMERICAN BEAUTY

監督■サム・メンデス
脚本■アラン・ボール
出演■ケヴィン・スペイシーアネット・ベニング/ゾーラ・バーチ/
ウェス・ベントリー/メナ・スヴァリー/ピーター・ギャラガークリス・クーパー
1999 アメリカ 122分


この作品はアカデミー賞の、作品賞、監督賞、主演男優賞、

脚本賞、撮影賞を受賞している。

アカデミー協会員は、こういう作品を選ぶところが偉い。


娘の同級生に一目惚れしてしまうような、

軟派な家長ケヴィン・スペイシーを擁する一家。

数多くの銃やナチが使っていた皿をコレクションしている、

硬派な家長クリス・クーパーをいただく一家。

アメリカン・ビューティ」は、

シカゴ郊外の高級住宅街に住む、この隣り合ったこの2軒の家族の物語である。


娘から、徹底的に疎外される父親ケヴィン・スペイシーや、

仕事で成功するため、なりふり構わずまっしぐらな母親アネット・ベニング

この一家の描き方は、まるでTVドラマのコメディのようである。

バックに芝居がかった笑い声が聞こえてくる、TVドラマのようである。


このコミカルな一家に、まったく正反対の厳格さただよう、

GIカットの父親クリス・クーパー率いるお隣一家が絡んでくる。

この一家の息子の真面目そうな男子高校生が、

実は怖い父親の目を盗んではイケナイことを繰り広げていて、

スペーシー一家にいろいろ絡んでくるのである。


この隣り合わせの両家のギャップが、面白くて可笑しくて、

私ははまってしまった。

両家は、一生懸命幸せを維持するために真面目に生きているのだけど、

まさに「アメリカン・ビューティ」を体現しているのだけれど、

それが滑稽なのである。


ケヴィン・スペーシーは、例のごとく肩の力を抜いて、

ちゃらんぽらんさを如何なく発揮していて、お見事であった。


脚本が素晴らしく、サム・メンデスは初監督作品だったが、

そんなことを微塵も感じさせない作品に仕上げることができた。


エンディングクレジットで流れる「ビコーズ」が、

ビートルズのオリジナルにかなり近い、涙の出るようなしっとりとしたコーラスで、

「それをそこで使うか、反則だなー」などとは誰も思わない(笑)

とても上手な余韻作りである。


アカデミー協会員は、まるで自分達の暮らしを笑い飛ばされているような、

こういう作品を作品賞に選ぶところがとても偉い、と思うのである。