遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

セント・オブ・ウーマン/マーティン・ブレスト

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セント・オブ・ウーマン/夢の香り Scent of a Woman

監督
マーティン・ブレスト
原作
ジョヴァンニ・アルピーノ
出演者
アル・パチーノ
クリス・オドネル
フィリップ・シーモア・ホフマン
ガブリエル・アンウォー

日本公開 1993年4月29日


ケーブルテレビで偶然目にしたシーンが、この画像のシーンだった。

ひと目面白そうだったので、テレビでは観ずに、映画のタイトルだけを憶えていて、レンタルDVDで鑑賞。
タイトルは「セント・オブ・ウーマン」、セント(scent)の意味は「におい;(特に)好ましい香り,芳香」とある。
しかし、このタイトルからイメージする映画の内容と、実際の作品の内容には少し乖離がある。

主人公のフランク(アル・パチーノ)は、事故で失明した退役大物軍人。盲目なので、女性のいい香りを感じることができる、タイトルの由縁はこの辺にあるのだろう。
オレゴン州(西海岸!カリフォルニアの北に位置する)からボストンに出てきて奨学金で名門高校に通うもう一人の主人公チャーリー(クリス・オドネル)は、感謝祭の休暇にクリスマスに帰郷する旅費を稼ぐためにアルバイトをする。

そのバイトが、家族の留守中にフランクの世話をするというもので、フランクの自宅での初めての出会いは散々なもので、田舎から出てきた苦学生を完膚なきまでに罵倒する。しかし、割のいい300ドルのバイト料もあって、チャーリーはフランクの世話をすることを選択する。

アル・パチーノは、盲目とはいえ、冒頭から筋金入りの元軍人役をエンジン全開で演じる。言葉に力があり、気の弱い人は見たくなくなるような畏怖を感じるだろう。しかし、そんな男に必ず存在する隠された心の闇は何なのだろうと思った人は映画を観続けるのである。

一方、田舎育ちで貧しい家庭で育ったチャーリーを役のクリス・オドネルは、罵倒されて傷つくことに慣れているのか、素朴な青年を飄々と演じる。そして、そんな飄々とした若者が陥りやすい落とし穴にに落ちることになる。そんな彼に手を差し伸べてくれる人は現れるのだろうかと思った人は、映画を観続けるのである。

主人公二人組は、ある意味で凸凹コンビの二人組は、ある秘密を心に秘めたまま、フランクの企画した贅沢なニューヨーク旅行に出かける。

70年代のアメリカン・ニューシネマに登場する凸凹男二人組なら、間違いなくそこから奈落の底に落ちていくストーリーなのだが、「セント・オブ・ウーマン」は、1993年の作品。
フランクの抱える問題は、NYで顕在化し終息する。そして、チャーリーの抱える問題は、NYからボストンに帰った日に本番を迎える。そのシーンがご覧の画像である。この場面からエンディングまでの20分くらいが、なかなかの見応えなのである。

アル・パチーノの「お前のような男はくたばれ!(原語ではもっとすごい罵倒の仕方だけど)」という辛辣な言葉に、首をすくめるような男はたぶんこんな映画を観ないのだろうな。

この画像のシーンを見たときに、おやっこれは面白そう!と私が思ったのは、「Scent of a Movie」のせいだったと思う。

アル・パチーノは、この作品で念願のアカデミー賞主演男優賞を受賞した。