ぼくはこんな本を読んできた 立花隆 文春文庫
トラック台数単位で購入したという。
また、井上ひさしは、生まれ故郷に蔵書を寄贈し、
その「遅筆堂文庫」の蔵書は実に13万冊に及ぶという。
1冊の本を上梓するには、その後ろには膨大なデータが必要だと、
二人の作家のエピソードがそれを物語っている。
現在は、インターネットという知の技術のおかげで、
データそのものがネット上に生息しており、
作家たちの資料集めは格段に容易になったと思われるが、
それでもなお、資料となる「本」は必要不可欠なものなんだろうと思う。
「ぼくはこんな本を読んできた」は、立花隆の雑誌などの連載をまとめた本。
構成は、以下の5部編成になっている。
Ⅰ知的好奇心のすすめ
Ⅱ私の読書論
Ⅲ私の書斎・仕事場論
Ⅳぼくはこんな本を読んできた
Ⅴ私の読書日記
Ⅱ私の読書論
Ⅲ私の書斎・仕事場論
Ⅳぼくはこんな本を読んできた
Ⅴ私の読書日記
Ⅳに納められた、中三のときの「ぼくの読書を顧みる」をはじめ、
著者の知的生産の技術が満載の良書である。
Ⅲのなかの「ぼくの秘書公募、五〇〇人の顛末紀」がおもしろい。
立花は、朝日新聞に秘書を求めるため次のような広告を出したところ、
なんと500人もの応募があったというのだ。。
◇一般秘書業務、資料整理・集め ◇年齢学歴不問 能力・人柄重視 整理能力(要若干英語・科学知識) 広範旺盛な知的好奇心ある方 ◇固20万円(応能力)賞与・昇給有 週休二日勤務時間自由・主婦可 ◇履歴書・スナップ写真数枚・自己照会文(ワープロ) 急送面接通知
500人を20人に絞って、筆記試験を実施、その問題は3問。
1 歴代の大蔵大臣の名前をできるだけあげよ(姓だけでもよい) 2 科学者の名前をできるだけあげよ(和洋、時代、ジャンルを問わない) 3 次の人々の職業、肩書きないし仕事のカテゴリーを述べよ 鎌田慧、米沢富美子、スパイM、川島雄三、石川六郎、平岩外四、景山光洋、C・L・ケーディス、 吉田秀和、ゲーデル、森嶋通夫、山村暮鳥、米山俊直、幣原喜重郎、松井孝典、 ウィルヘルム・ライヒ、那野比古、瀧口修造、フォン・ノイマン、伊藤隆、古井喜実、 ロバチェフスキー、チョムスキー、イヨネスコ、ジョン・ケージ、井筒俊彦、ポリス・ヴィアン、 清岡卓行、フランシス・ベーコン、日高敏隆、ネフェルティティ、松野頼三、トマス・アクイナス、 ウィリアム・ジェームズ、辻政信、児島襄、中村元、ファインマン、フリッチョフ・カプラ、 スウェーデンボルグ、M・エリアーデ、岸田秀、高畠通敏、ラス・カサス、アレン・ダレス、 キュブラー・ロス、渡辺格、ケイト・ミレット、伊谷純一郎、ガルシア・マルケス。
誰も答えられなかった川島雄三(映画監督)を知っていたけれど、
私は第3問に出された50人のうち、8人しか知らない(恥ずかしい)。
20人残ったなかで、唯一高卒だった41歳の女性が、1問目から順に、5人・15人・13人の正解で、
その後の英語や電話対応実地試験や面接等をかいくぐって見事採用となった。
2問目の15人と、3問目の13人はすごいと思う。
ちなみに面接では、立花に近い編集者も面接官に加わり、
「よく見るTV番組。最近よかったと思ったTV番組。
いま2時間と2万円が与えられたらどう使うか。 よく笑うか。
最近腹の底から笑ったこと。最近真剣に怒ったこと。
最近泣いたこと。 これまでの人生で最大の失敗」
などをベースにやり取りがあったようである。
も、大変いい読み物であった。