オランジュリー美術館展 ジャン・ヴァルテル&ポール・ギョームコレクションの
第3弾は、ピカソ。
彼は、ブラックとともにキュビスムの代表選手。
ブラックの風景画を審査したマティスが、
「すべて立方体で構成されている」と評した。
この言葉がキュビスムという名称の端緒となった。
制作しており、それから十数年後の1921年に描かれたこの「白い帽子の女」は、
伝統的な新古典様式の作品である。
普通は順序が逆じゃないかと云われても無理のない、
モダンから古典への回帰であった。
この頃、私生活では息子が産まれ、仕事はロシアバレエ団の舞台美術を担当していて、
生活と同様に精神的にも安定した時期だったのかもしれない、
復帰を成し遂げている。
白い帽子を被ったモデルは、当時の妻オルガと思しき女性で、
作品全体をのどかな幸せな空気が漂い、
赤や青の絵具は控えめだが澄みきった落ち着きを感じさせ、
母性を連想させる手触りの良い木綿のような風合いの作品である。
ピカソは、この作品から数年後には、一転してシュールな画風になるのであるが、
彼の芸術は、終始爆発していたわけではない。
こういう穏やかな平和な時代を映した作品群が、
オランジュリー美術館には、つまり、ポール・ギョームコレクションには存在するのである。