遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

腐敗政治を告発する映画「コレクティブ 国家の嘘」を見ました

Amazon Prime Videoで何か見るべきものがないかと物色していて、「コレクティブ 国家の嘘」というルーマニアドキュメンタリー映画に遭遇しました。

ルーマニアと言えば、コマネチとともに独裁者チャウシェスク元大統領が国を象徴・代表する有名人ですが、そのチャウシェスクの流れをくむと言っていいルーマニアの「腐敗政治」を暴露したのがこの映画です。

■あらすじ
2015年10月30日、ルーマニアの首都ブカレストにあるナイトクラブ「コレクティブ」で演出用の火花が燃え広がり、27人が死亡、約180人が負傷する大惨事が起きた。その後、大やけどを負いながらも一命を取り留めた被害者が入院先の病院で次々に死亡し、最終的な死者は64人にものぼった。不審に思ったスポーツ紙の記者たちが調査報道に乗り出し、製薬会社と大病院の癒着や、医療システムの腐敗、政府の噓を次々に暴いていく。怒る市民の抗議を受けて内閣は退陣し、新たに就任した若き保健相は汚職撲滅のための改革に着手するが、根深い腐敗に直面することになる。

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クラブの火事ではガスや煤煙などを吸ってクラブ内で死亡したのが27人で、火傷などで病院に運ばれたのち亡くなった患者が37人を数えることになりました。医療技術が発展途上なルーマニアでは、重篤な患者はウィーンなどに運ばれ海外で治療を受ける選択肢も一般的であるようです。

火事で病院に運び込まれた若者たちが、入院後10日後くらいから容態が悪化し次々と亡くなっていくことに疑問を抱いたスポーツ新聞の編集長が動きます。

大手マスメディアは、政権・体制べったりの御用メディアばかりで、このスポーツ新聞のスタッフたちが独自取材を続けます。病院の医師が匿名で内部事情をリークしたところ、驚愕の真実が次々と表ざたになり、当該のスポーツ紙が世論を動かすことになります。

ルーマニアの350の公立病院に納入されたある製薬会社の消毒液が通常の10倍に薄めらた状態でボトリングされていて、2000の手術室で使用されていたことが表面化します。その薄めた薬品を納入したことにより浮いたお金は、病院理事長や政治家などに流れ、その腐敗についてこの映画は暴いています。

真相をもっともよく知る製薬会社の社長は、当局による取り調べの前に交通事故で謎の死を遂げます。

保健相の辞任後就任した新保健相が魅力的で、省内のスタッフ会議にカメラが入って、後に国民はそのスタッフ会議を映画館などで見ることになります。保健相の周りには信用できるスタッフがいると可視化されているだけでも、日本の厚労省よりましかもしれません。

事件当時の保健相はルーマニア国内の病院では火傷患者の治療ができる設備がないことを知りながら、患者がより良い治療を受けられるだろう国外に移送する費用を払いたくなかったとされています。

人の命より金が優先する政治にあ然としますが、麗しい日本の国やどこかの自治体も同心円状にあると言えば言い過ぎでしょうか。

ルーマニアではこの映画がきっかけにさまざまな腐敗が明らかになり、後に社会民主党は政権の座を下ろされたそうです。それはこの映画が数々の賞を受賞したりノミネートされたことよりもっと大切な出来事だったと思います。