遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

祝 藤井聡太名人誕生

将棋の第81期名人戦は、挑戦者の藤井聡太(20歳10カ月)六冠が4勝1敗で渡辺明(39)名人を破り名人のタイトルを獲得しました。

藤井新名人は谷川浩司(61) 十七世名人の最年少名人記録(21歳2カ月)を40年ぶりに更新した上、羽生善治(52)九段以来2人目の七冠になりました。

彼がデビューした時に、当時63歳だった私は「藤井君が名人や七冠(当時の全冠)になるのを目にできるかもしれない」と思い、彼のほぼすべての対局を目にしてきましたので、感慨もひとしおです。

私が20歳の頃、当時の中原誠(75)名人のファンになり将棋を覚えて半世紀、解説付きの観る将棋ファンでいられることに喜びを感じます。

一手一手に全身全霊をかける藤井聡太の姿に心底感心してしまうのですが、それは彼の対局を通して見ていて初めて受け取れるものですから、インターネットの時代になって藤井の対局の一部始終を目にできるようになって豊かな生活を過ごせていることに嬉しく思います

藤井聡太七冠は、デビュー以来の通算成績326勝65敗で勝率が0.8337。
谷川浩司九段がAbemaのインタビューで、勝率が8割3分ということは5勝1敗のペースで勝つことのできる棋士ですので、その棋士を相手にタイトル戦で勝利するのは至難の業だと思います、と語っていました。

タイトル戦は、7番勝負や5番勝負でタイトルを争うもので、谷川の言うように、藤井名人のタイトル戦の戦績は安定して強いものとなっています。

2021年の叡王戦豊島将之(33)九段から奪取した時に唯一の3勝2敗のフルセットになり、2022年の竜王戦広瀬章人(36)八段に4勝2敗、王将戦羽生善治(52)九段に4勝2敗しただけで、あとは1敗か全勝でタイトル戦に勝利しています。

藤井信名人に残されたタイトルは「王座」だけですが、いまその挑戦者決定トーナメントのベスト8に残っています。あと3連勝すれば永瀬拓矢(30)王座の挑戦者になります。

それと並行して、6月からは棋聖戦(5番勝負)と王位戦(2日制7番勝負)のタイトルマッチが始まりますが、挑戦者はともに佐々木大地(28)七段で、藤井との対戦成績は2勝2敗の強者です。どういうタイトル戦になるか今から楽しみです。

ところで、渡辺明前名人はこれで無冠になり、19年ぶりのことなのだそうです。

渡辺九段は20歳で竜王のタイトルを取り、その後、一世代年長の羽生世代の強豪たちをなぎ倒して数々のタイトルを獲得。2020年に藤井聡太棋聖を奪取された当時は四冠を保持していましたから、彼のファンの方のみならず将棋ファンとしては淋しい思いがします。

このまま渡辺が沈んでいくことは考えられないので、「魔王」の蘇りに期待したいところです。さしあたりは、王座戦に藤井とともにベスト8に残っていますので、2人の決戦で挑戦者が決まるかもしれません。

お楽しみはこれからだ