遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

今村夏子「星の子」を楽しく読みました

 

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星の子  今村夏子 (著)    朝日文庫

「むらさきのスカートの女」で2019年に芥川賞を受賞した今村夏子の「星の子」を、年度末に読了した。

主人公は「わたし」こと中学3年生のちひろ

ちひろの両親は「魔法の水」でちひろの皮膚病などが完治したことを機に謎の教団に入信し、現在も熱心な信者である。

その事実は、親族や学校でも知られるところとなる。

謎の教団から両親を脱会させたいという思いは、ちひろに思い入れのある登場人物や本書のほとんどの読者の共通の願いかもしれない。

しかし、そんなことはどこ吹く風かというように、ちひろの一人称で、彼女の家族や教団行事や親族や中学校生活などが淡々と語られる。それが独特の世界を醸し出す。

「むらさきのスカートの女」と同様、へんてこりんな人物たちが登場するのだが、どこにでもある愛と毒のある世界が平易な言葉で綴られていて、妙に居心地がいい。

巻末付録の著者今村夏子との対談のなかで、小川洋子が登場する少年がいいと言及していたが、私は登場する少女たちが好きだった。それは、小川が女で私が男だからと結論付けた(ああ単純)。

ちひろも同級生の少女たちも、何のかんの言ってもあっけらかんとたくましく、それがこの物語の生命線だと感じた。

今村ワールドにまた戻ってきたい。

 

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