女たちのジハード 集英社文庫
篠田 節子 (著) 価格: ¥740 (税込)
第117回直木賞受賞作。
ジハードと言っても、イスラム関連でも何でもなく、
日本の同じ職場に在籍するOLたちの「聖戦」を描いた小説。
作者の篠田節子は、私より少し若い、八王子市役所勤めをしていた元公務員。
1955年東京生まれ。
90年、『絹の変容』(第3回小説すばる新人賞受賞)でデビュー。
97年『ゴサインタン―神の座―』で山本周五郎賞、
『女たちのジハード』で第117回直木賞を受賞した。
その他『聖域』『弥勒』『夏の災厄』『ロズウェルなんか知らない』など。
タイトルから察するに、この人の作家活動の礎には、
何か宗教的な源流があるのだろうか。
他の作品を読んだことがないのでわからないが、
多分、読んでいても判らないだろうけど。
ただ、男社会の中で働いていた作者は、
踏まれたり虐げられたり、あるいは絶望していたのかもしれない。
中堅保険会社に勤める5人のOLには、
篠田の血が通っていることくらいは、判る。
実社会では、女たちの自らの職場に向けた訴訟があり、それが勝訴になり、
しかし、だからと言って何らかの劇的な変化が「男」にあったわけではない。
ま、少しずつ女性に開放された職場になりつつはあるけど。
この物語は、女によって書かれた女たちの生活を綴ったもので、
自らの道を切り開いていくための、戦いの物語である。
男社会に向けた「聖戦」ではあるが、
しかし、敵を打破する戦いではなく、自爆のような悲しいものでもなく、
5人の女性の個人戦であり、勝ち負けの決着もはっきりしないままフェードアウトしていく。
男の生活と違って、いろいろあって、女たちの生活は面白い!
読後感は、爽やかな感動を覚える女たちの戦いである。
これぞ「聖戦」なのだろうか。知らないけど。