遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

カショギ記者とサウジとトランプ大統領

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トルコ国内で、自国のサウジアラビア総領事館に入って出てこないままのジャマル・カショギ記者。

彼は、サウジ批判の記事を、とりわけムハンマド皇太子に対する批判記事を、滞在中のアメリカのワシントンポストなどで展開していたが、60歳の誕生日を前に、忽然と姿を消した。

総領事館に入って、僅か7分でカショギ記者は殺害されたとニュースは伝えていて、トルコの領事館にはサウジからの特殊部隊や工作員が詰めていたようである。どうやら、カショギ記者はバラバラにされて総領事館から運び出されて、死体は行方不明になっているようだ。まるで、ジャン・レノ主演のB級スパイ・アクション映画のような展開だ。

画像は、カショギ記者が署名記事を書くはずのスペースが、空白のままで発行されたワシントン・ポスト紙である。哀悼の意を表したものでもある。

サウジアラビアは、最近になってようやく女性の車の運転が認められたという、男尊女卑の厳格なイスラムの教義を国家の根幹としている、王室を中心とした絶対君主制の世界第二の産油国である。

サウジは観光客も受け入れない閉鎖的な国で、王室の独裁体制はアラビアンナイトの時代から不変であるように思える。

しかし、潤沢なオイルマネーアメリカからは大量の武器を購入しているし、王室とトランプ大統領の個人的な関係は密接で、オイルマネーがトランプに流れている可能性もあり、彼らの関係は採掘されたばかりの原油のように真っ黒だといえよう。

たまたま地下に石油が埋まっていたアラビアンナイトの国が、20世紀に堆積し続けたオイルマネーのおかげで、いろんな意味で「余裕」のある国家体制や世界の主要国と外交関係を維持していた。

しかし、石油燃料との決別は、そう遠くない将来にやって来る。地球上のクルマが、ほぼ全車電気で走る時代がまもなく到来しそうだ。再生可能エネルギーによる発電も、数年後には世界主要国で主流になるだろう。

石油などに見向きもしなくなる時代が、石油の枯渇より早く来ることにサウジアラビアもようやく気付きだしたのかもしれない。カネに目のない商人上がりのトランプ大統領を手なずけていまを生きているようだが、トランプが消えエネルギー革命が起きると、サウジには砂漠以外には何も残らなくなるのではないか。

そんな国の実に軽薄な若き皇太子によって引き起こされた、自国の記者殺害という由々しき反人道的な事件は、残り少ないサウジの寿命がさらに短くなるような気がする。

それは、ほかでもない祖国を愛していたカショギ記者が最も避けたかった事態なのではないだろうか。痛ましいことである。