遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

日航機事故のアナザーストーリー

イメージ 1

御巣鷹山に墜落し520名の犠牲者を出した日航123便墜落事故は、1985年の今日8月12日に起きた事故だった。

NHKBS放送「アナザー・ストーリー」で、当時この事故に関係した人たちをいま取材し、当時の事故のようすを聞くという番組構成だった。生存者のスクープ写真を撮った群馬県の地方新聞者のカメラマンや、死体を家族に確認し引き渡しを行った看護師や、自己の責任当事者を追求しようとして叶わなかった幼い息子を事故で亡くした母親や、事故原因と責任当事者の起訴までたどり着こうとしていた捜査官など涙の証言が、第三者の私にも無念で仕方なかった。まさに事故に隠れたアナザー・ストーリで、NHKの制作者は淡々といい取材をしていたと言える。

この123便ジャンボジェットは、1978年に伊丹空港で尻もちをつく事故を起こし、ボーイング社で圧力隔壁の修理が行われた。しかしその修理ミスと、日航のチェックミスと、運輸省(当時)の検査ミスにより、7年後に圧力隔壁は飛行中に破壊され、機体後部をなくした123便はダッチロールの末、御巣鷹山に墜落したことも、番組は明らかにしていた。

機体の圧力隔壁が損傷したら、通常は修理をするのか、すべて新品にするのは不可能なのか知らないが、番組ではそこまで突っ込んだ取材をしてほしかったが、いずれにせよ、ボーイング社も日航運輸省も実にずさんな仕事ぶりで、それが原因で多くの犠牲者を出した。番組を見ていて、あらためて人の命をなんと心得ているのかと、怒り意外の感情が出てこなかった。

この国では、利潤や効率だけを追求した産業界と監督官庁のおかげで、どれだけの人間が犠牲になってきたのか。足尾鉱毒事件、イタイイタイ病水俣病四日市ぜんそく、大阪空港訴訟、光化学スモッグ田子の浦ヘドロ、アスベスト被害、薬害エイズ被害、福島第一原発事故など、悲しい歴史があり現在進行形の不祥事もある。

美しい国民性を持つこの国なのに、一握りの悪人達とかなり多くのいい加減な人間達のせいで、残りの大多数の人間が不愉快になったり地獄に突き落とされたりするのである。日航機の「ずさんの連鎖」による123便の墜落事故の教訓は、いまに生かされているのだろうか、そうは思えない。ひどい政権の威を借るブラック企業と無能でずさんな官僚たちは、少しずつ増え続けている。

日航機墜落事故の怒りのアナザー・ストーリーがいまだに存在する。合掌。