遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

死者と生きる未来/高橋源一郎

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ポリタスの戦後70年特集。

8月18日の高橋源一郎の文章が悲しくて重くて力強い。高橋は過去の自分をここにさらけ出している。女衒(ぜげん)をしていた時の映画の1シーンのような過去を記す。そして、重い過去の自分を捨てて再生した一瞬を記している。
さらに、あの戦争で戦死した叔父のことも書く。叔父が生きて見たいと憧れた未来に、いま自分は生きていると気付く。そして以下のように結ぶ。

《もしかしたら、慰霊とは、死者の視線を感じながら、過去ではなく、未来に向って、その未来を想像すること、死者と共に、その未来を作りだそうとすることなのかもしれない。いま、わたしには、そう思えるのである。》

このフレーズだけを読めば、明るい未来を作るんだ!という単純な意志表明に見える。しかし、初めから読み通すと、高橋の過去・現在・未来が重層するプレートを感じられよう。やがては、自分の過去・現在・未来が見えてくる。いまを生きる私たちに強く訴えかける、でももう悲しくない重みがあることがお分かりになる。

死者と生きる未来 高橋源一郎 (作家・明治学院大学教授)2015年8月18日