遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

悪人/吉田修一

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   悪人(上・下)      吉田 修一  (朝日文庫)


朝日新聞の日曜版の書評欄に、「ゼロ年代の50冊」というコーナーがある。

ゼロ年代の50冊」はアンケートで選びました。新聞や週刊誌で書評を執筆している方に、2000~09年の10年間に出た本の中からベスト5を挙げていただきました。317人にお願いし、151人から回答が寄せられました。ベスト5を5点~1点と点数化し、順不同はそれぞれ3点で集計しました。


選ばれた全50冊、ジャンルは多岐にわたり、私が読んでいたのは、

水村美苗の「本格小説」だけだった。
小説以外はあまり本を読まないとはいえ、1冊とはおそまつなことである。

先だっての日曜日、何気なくその「ゼロ年代の50冊」に目がとまり、

そこで紹介されていたのが、吉田修一の「悪人」であった。

その後「悪人」を買って読み終えたので、「ゼロ年代の50冊」は2冊を制覇したことになる。

本を何冊読んだということよりも、どれだけいい作品にめぐり合えたか、

ということのほうが大切なことで、「本格小説」も「悪人」も、

とてもいい出会いになった。


私は、「悪人」上下巻を一気に読み終えた、

ストーリーなど内容は一切触れないことにする。

タイトルにある「悪人」が登場するのか否か、

もし登場するならそれは誰なのか、小説か映画で確かめられたい。


舞台は長崎と佐賀で、会話は地元の言葉がそのまま使われており、

意味はよく分かるし、人物描写に効果的で、

地元以外の読者には、とても印象的な九州訛りであった。

あとに尾を引きそうな印象的な会話の連続であった。

それは、九州訛りの印象と、

その訛りとは関係のない、普遍的な意味を持つという印象も含めてのことである。


私は、自分にとって大切な人は、一人でも十分だといつも思うし、

その大切な人は、永遠に大切な人であり続けるからこそ、

たった一人でも十分なんだと思うのである。


映画「悪人」は、9月に全国一斉ロードショー公開される。

監督が「フラダンス」の李相日、脚本は李と原作者の吉田の共同脚本!で、

映画の主人公を演じるのは妻夫木聡深津絵里だという。


この作品で、すでに芥川賞作家であった吉田修一は、

第34回大佛次郎賞と第61回毎日出版文化賞を受賞した。