遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マーラー:交響曲第1番/ワルター

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マーラー交響曲第1番「巨人」/ブルーノ・ワルター、コロンビア交響楽団


昨日深夜、偶然にグスターボ・ドゥダメル

ロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督就任記念演奏会をNHKで聴いた。

NHKはいろんなソースをお持ちで、それをBSハイヴィジョンで深夜にこっそり放送するのである。

まったく贅沢で、でも休日前の深夜なので、ありがたいことである。

会場はウォルト・ディズニー・コンサートホールで、

演奏が終了してスタンディング・オベーションをする観客の中に、

トム・ハンクス夫妻やシドニー・ポワチエ夫妻の姿も見られた。

ポワチエ夫人は、私の一番好きだった女優ジョアンナ・シムカスで、

素の彼女の姿を見るのはおそらく初めて、一瞬だったがお幸せそうで何よりであった。


マーラー交響曲1番「巨人」、私のライブラリーは、

ワルターとコロンビア交響楽団の1961年の録音版で、

これもハリウッドのアメリカン・リージョンホールで録音されている。


マーラーの弟子でもあったワルターの最晩年の録音である、

演奏内容については、よく分からない、これ以外はあまりよく知らない。

このマーラー交響曲は、なんだかいろんなものがごちゃ混ぜの組曲のようで、

ところどころで鳥がさえずったり角笛風のホルンが響き渡ったり、

ティンパニーが不安な気持ちにさせたり、ダンス音楽が楽しかったり。

戦前からのアメリカのミュージカル映画に使われる素直な音楽や、

戦後日本の映画で使われる、現代音楽のようなフレーズをも連想してしまう。

そういうところが、アメリカ人に受けるのだろうか、

アメリカに亡命したユダヤ人のワルターが、当地にマーラーを広めたのだろう。

起承転結がはっきりしたドラマチックな、たとえばドボルザークの「新世界」のほうが、

アメリカ人は好きに違いないと思うのだが…、「新世界」はそのまんまアメリカなんだけど、

1番「巨人」は、地球上の何処ででも愛されているにちがいない。


この1番は、28歳のマーラーの若さと野心と試みがよくあらわれた作品で、

一度好きになるとずっと一生好きになる、ジョアンナ・シムカスみたいなシンフォニーなのである。