遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

天変斯止嵐后晴/国立文楽劇場

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大阪は日本橋にある国立文楽劇場は、今夏の特別公演中である。


通常時、夜の部があるのかないのか知らないが、

19時からサマーレイトショー「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」

が上演されており、私ははじめての文楽鑑賞。

東京の国立劇場では9月にこの出し物がお目見えするようで、

18時30分からの開演とある。大阪の30分遅い開演が「レイトショウ」なのであろう。


さて、「天変斯止嵐后晴」は、シェークスピアの「テンペスト」が下敷きになっている。

私は、シェークスピアの「テンペスト」の原作は未読で、ストーリーもまったく知らない、

それでも、太夫浄瑠璃のせりふをそのまま映し出してくれる字幕に助けられて、

それはそれはもう、とても楽しめた2時間であった。


ロイヤル・シェークスピア劇団の「真夏の夜の夢」を、

若い頃NHKのテレビで見たことがあるが、それを思い出した。

この「テンペスト」も「真夏の夜の夢」にも妖精が登場し、人間を惑わしたりするのだが、

風のように軽快で、心温まる悪戯でを見ていてなんだか幸せになってくる。

ファンタジーだから、そんな感じでいのだと思う。

「天変斯止嵐后晴」全編にわたって、人間国宝鶴澤清治が書き下ろしの作曲を担当した。

妖精が空飛ぶ場面に使われる半琴の高音は、夢のように美しかった。


清治自身は、第五幕に登場し、たっぷり三味線を聞かせてくれた、

私はちょうど彼の目線の延長線上、距離にして数メートルの席にいたので、

目が合っているような気がして少し気になった。

ことほど左様に、彼の目線はまっすぐ前を見ており、

手元には一切目を向けないのである。


会場は、ここもやはり女性が多くを、8割がたを占めていたと思う。

そういえば、私の祖母も文楽が大好きで、

テレビ放送があれば必ず観ていたことを思い出した。


世代構成は、40代~50代の女性が一番多く、

その年齢ゾーン以上と以下の女性陣が、同じくらいの割合だったろうか。

誤解を恐れずにとても偏った見方で言うと、観客の美人の密度が高いのには驚いた。

それに若い人が意外に多かったのも驚きだった。

どこの芸者衆か知らないが、きれいどころを数人引き連れた旦那も見かけたが、

男は、文楽見に来る女性に興味が大きく、文楽は二の次なのではなかろうかと、

これまた、真摯に古典芸能鑑賞の目的しかない私の大きな偏見で、

そのような感想を持ったしだいである。



「人生は夢の如し。眠りに始まり、眠りに終わる。」

テンペストのこのテーマが、中世の九州の孤島に舞台を変えても、

色あせることなく、全七幕に満ち溢れたはつらつとした舞台であった。


8月5日まで公演中である。