遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

竹本住大夫と鶴澤清治/文楽

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少し前の話になるが、今年の正月、

1月1日のBSハイビジョン放送で、午後8時から放送されたのが、

「100年インタビュー」。

100年後の日本人へメッセージを残せるゲストが毎回主演するこの番組、

この正月のゴールデンタイムに登場したのが、人間国宝竹本住大夫(すみたゆう)。

伝統芸能人形浄瑠璃文楽」で、現役最高齢の浄瑠璃の語り手・太夫を務めている。


文楽は、江戸時代に大阪で発祥。

太夫と三味線からなる義太夫に合わせ、人形遣いが人形を操る。

太夫の役割は、物語全体の流れを作り、老若男女の別なく会話や心理までを語り分けること。

まさに、長い修行を必要とする職人技だ。

そうした厳しい世界で、80代で現役太夫を務めているのは、住大夫が史上初。


さらにさかのぼるが、2007年に放送されたのが、

「闘う三味線 人間国宝に挑む ~文楽一期一会の舞台~」。

鶴澤清治という文楽の三味線を真中に置いたドキュメンタリー。


東京国立劇場で催された鶴澤清治のリサイタルに、

竹本住大夫がゲスト出演し、二人の一対一の初競演が映像化されたものだった。

私はこの番組で、始めて浄瑠璃の奥深さに接した、

稽古でのこの二人の息の合わせ方に、芸とはこういうことなんだと感心した覚えがある。

芸術を(「仕事」でも同じ)を作り上げるとはこういうことなんだと、

感動したのだった。


チャンスがあれば、この二人の舞台を見たいと思ったのだが、

この夏そのチャンスが到来した。


大阪の国立文楽劇場で7月18日より文楽夏季特別公演がかかることになった。

◆サマーレイトショー

「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)
   シェイクスピア作「テンペスト(あらし)」より
   山田庄一=脚本・演出  鶴澤清治=作曲

   *主な出演者
    竹本住大夫
    竹本綱大夫
    鶴澤寛治
    鶴澤清治
    吉田簑助
    吉田文雀 ほか

出演者の上から二人ずつが、それぞれ太夫・三味線・人形遣いで、

この6人は全員人間国宝である。


私のような素人客に、劇場は字幕サービスを行ってくれるらしく、

それならその親切に応えようと、チケットを取った。

本当のところは、とにかく訳がわからなくてもいいので、

竹本住大夫鶴澤清治と、同じ空間に居たいだけのことなのだが。


この6人の出演者がどのように登場してくるのかよく判らないが、

また、シェークスピア浄瑠璃がどのように合体するのかも想像できないのだが、

不思議な空間に足を踏み入れるのを、今から楽しみにしている今日この頃である。