7月13日、米ペンシルベニア州で、大統領選挙に向けた集会での演説中に銃撃を受けたドナルド・トランプ。
その一報を聞いた私の妻は、「トランプのヤラセ?」と厳しいことばを吐きましたが、どうやらそうではなかったようでした。
トランプはさいわいにも耳を負傷したものの命に別条はありませんでした。しかし、会場にいた聴衆のひとりが亡くなり2人がけがをするという悲しい結末になりました。
トランプは、秋の大統領選まで共和党の候補者として遊説を続けると思われます。
狙撃犯はトーマス・クルックス(20歳)で、トランプが演説をしたステージから130mほど離れた建物の屋根から犯行に及んだようで、容疑者はその場でシークレットサービスによって射殺されました。
クルックス容疑者のことを高校の同級生は、「毎日のようにいじめられていた」「昼食時は1人で座り、服装をばかにされていた」と語ったようで、別の同級生は「人の悪口を言わない良い子で、こんな事件を起こすとは思えなかった」と話しました。
容疑者の父親は政府の不介入を重視する小政党リバタリアン党支持者で、母親は民主党を支持、容疑者本人は18歳で共和党員として有権者登録していたとメディアは伝えています。
アメリカのABCテレビなど主要メディアは、クルックス容疑者が使用したのは殺傷能力が高いライフル銃「AR15」で、容疑者の父親が合法的に購入したものだと報じ、AP通信によると、事件当時に着ていたTシャツには、拳銃やライフルを撃つ動画を投稿する人気ユーチューブ番組の名前が記されていたようです。
「かつてイジメられていた少年が、20歳になって父親のライフルで、自分が所属する共和党の元大統領(次期大統領候補)を狙撃した」事件ということのようですが、容疑者が生きていたら、社会への不満や怒りや不条理を動機に挙げていたかもしれません。
容疑者はマッチョな青年ではなかったようですが、共和党員になってもマッチョな自分を見つけられなかったのに、父親の銃を手にした時にマッチョな男になれたと錯覚したのかもしれません。
容疑者の遺したもので動機の真相に迫れるかもしれませんが、トランプでは自分の理想とする世の中に変革できないことが明らかになった時点で、犯行を決心したのかもしれません。
流れ弾にあたって死傷者のうち、妻子をかばって命を落とした50歳の消防士コーリー・コンペラトーレさんを、ペンシルベニア州のシャピロ知事は「コーリーはヒーローとして亡くなった」と死を悼みました。
シャピロ知事は民主党の有力知事の一人で、共和党のトランプ氏に批判的な人物ですが、会見では「政治的な意見の違いが暴力に発展することがあってはならない。意見が違うのは構わない。我々は平和的な政治プロセスを通じて、意見の相違に対処しなくてはならない」と強調したそうです。トランプより100倍も立派な知事です。
それにしても、犯行に使われたライフル「AR-15」の規制を何とかできないものかと心を痛めてしまいます。
このライフルによる銃撃事件は数多く起きているようで、インスタグラムで売買されている実態もあるようですから、何とも恐ろしいアメリカの銃規制法です。
ということで、凶弾に命を落としかけたドナルド・トランプには、殺傷能力の高い銃やライフルについて規制を強める、原則禁止する法改正を大統領選の公約にあげてほしいのですが、おそらく無理だろううなあと思うため息のきょうこの頃であります。