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あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

トルコの「耐震基準・行政処分免除」は、日本の原発にも適用されている?

2019年に完成したトルコ・イスケンデルンの新築マンション、震災前と震災後

上の画像は、トルコのイスケンデルンという都市に立つマンションで、左が震災前の画像で右が震災後のものです。

2019年に建った新しいマンションが、このように崩れてしまいました。

BBCニュースは以下のように伝えます。(要約)

過去の震災の経験から、トルコでは地震に備えた耐震基準が徹底されているはずだったのですが、専門家によると「今回の地震の最大強度は激しかったが、しっかり造られた建物を崩壊させるほどではなかった」と話しています。

2018年の最新基準を含めた建築基準は、十分に徹底されていなかったようで、それ以前も含めてトルコでは「行政処分免除」という悪しき実態があるようなのでした。

安全基準を満たさない違法建築に対し、政府が「行政処分免除」を繰り返し提供してきて、安全基準を満たさなくても一定の金額を払えば法的に見逃されるという仕組みがあるようです。

「処分免除」が実施されると「以前からある建物がほとんど改修されていないのに加えて、新築の建物についても建築基準がほとんど徹底されていない」と、専門家は話しています。

トルコ南部の被災地では、7万5000棟の建物にこの「処分免除」が与えられていたといいます。2020年に西部イズミル県で大地震が発生しましたが、当時同県で67万2000棟が直近の行政免除の恩恵を受けていたようです。

2018年時点で、トルコの建物の50%以上に当たる約1300万棟が建築基準違反だと、環境・都市省は話しているそうです。

すでに3万5千人以上の犠牲者が出ていて、何とも痛ましい自然災害ですが、耐震基準通りの建物に住んでいれば、救えた命も多かっただろうと思いますので、「行政処分免除」による人災でもあると言えましょう。

日本では、95年の阪神淡路大震災以降、学校などの公的建造物をはじめとして耐震工事を施された建物が多くなったように感じていますが、2005年11月に発覚した「姉歯事件」、別名「構造計画書偽造問題」「耐震偽装問題」が大きな転機にもなりました。

姉歯事件をきっかけに、2007年6月に建築基準法が改正されました。法改正されたのは、建築基準値を満たしているかどうかの確認手続きを厳格にするというものです。法改正された後は、姉歯事件前まで使われていたソフトが新しくなり、簡単には耐震偽装工作ができないように強化されました。

ただし、災害があって不正や手抜きが明るみに出ますので、実際に基準通りに耐震補強がなされているかは、専門家に調査を依頼する以外には手がないところです。

いずれにせよ、トルコのような「公的な偽装」とも言える「行政処分免除」のようなものは、地震大国日本には存在していないはずです。

ただし、原発の耐震基準はその例外では?と思えるほど基準が緩くはないでしょうか。原発のそれは、住宅メーカーが建てる個人住宅の耐震基準以下のだという話も多く見受けられますし、福島原発の3.11の津波地震の被害という実体験を私たちはしています。

原発の自然災害による被害は、人が原発建屋の下敷きにならなくても、原子炉の暴走を引き起こすと周辺地域に大変な被害が想定されます。そのことを無視して、新規建設や老朽化の進んだ原発の稼働を続けると、トルコの行政処分免除による今回のような大災害を招くことになると思いますので、あらためて、地震大国日本に原発は極めて危険な施設だと申し上げたいと思います。

最後に、トルコ・シリアの多くの犠牲者・被災者に心よりお見舞いを申し上げます。