「ボクの音楽武者修行」 新潮文庫
小澤 征爾 (著) 価格: ¥420 (税込)
小澤征爾は、1935年生まれだから、今年で70歳。でも若い!
彼は、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任するまで、今頃の季節には、東海岸の避暑地タングルウッドで、世界中の若い演奏家を集めて合宿&コンサートを開催していた。
タングルウッドの夏の音楽祭の真打はボストン交響楽団であり、その前座のコンサートも小澤が関わっていたのである。それは、実に30年ほど続いていた。
いつだったか、NHKで小澤最後のタングルウッドの夏季セミナーの模様を放映していた。前座コンサートまでのリハーサル風景が、実に面白いのである。
生徒というべき世界中の若い演奏家は、オーディションを通過した一流演奏家のタマゴである。フルオーケストラを世界中の若者から集めたと理解されたい。
リハーサルでは、何度も演奏を止めて、そのフレーズをどのような気持ちで、どう演奏するのか、小澤の解釈を説明するのである、にこやかに。
心と技術を結集させて、糸を紡いで機を織るように、ひとつの曲を完成させていくさまはホントに面白く、何回も観てしまった。ボストン交響楽団の団員による個別指導も有りであった。
キラキラした目で、小澤の解釈を聞く生徒たちの姿の美しいこと美しいこと。偉い。
小澤も偉い。
ついでに、こういう番組を作るNHKも偉い!
そんなキラキラした若者の頃の小澤の自伝が、「ボクの音楽武者修行」である。
タングルウッドでの、若者たちへの小澤の接し方は、未来に向かって一生懸命な若い人に、手を差し伸べてやるものであった。
若い小澤に対する、バーンスタインやカラヤンがそうであったように。
かつての小澤は、一生懸命な若者であったことが、この本を読めば理解できる。
ブザンソンの指揮コンクールで、小澤がグランプリを獲った話もここにたっぷり書かれている。このエピソードもとびきり面白い。