「赤い地図」(1980)
次女は海外に新婚旅行中。長女は配偶者と海外赴任先に帰っていった。私は娘たちを送り出しただけの親だったので、しっかり育てる責めは果たせなかったが、健康で幸せになってくれればと祈るばかりである。いずれにせよ、私の日常は戻り新しい人生が始まった。
さて、三岸節子作品のご紹介、最後の一枚は「赤い地図」。1980年、三岸が75歳頃の作品。作品についての詳細なデータはわからないが、これも大きなサイズの作品であった。展覧会のパンフレットの「所蔵先」は空白で、個人蔵なのだろう。
三岸はフランスに移住したのち、欧州各地の風景作品を多く残している。この作品は、ヴェネチアを描いたものだろうと思う。彼女の作品にはこの水都がよく登場する。
水際の建物を鮮烈な赤で表現し、それが水に反映していて、会場でもひときわ目を引く作品だった。
この展覧会には、アルカディア(ギリシャ)の真っ赤な屋根と白い壁の家並みを描いた作品が展示されていたが、屋根の赤はおそらく赤に近いものだったと思うが、ヴェネチアの水辺にこのような赤い建物は果たして存在していたのだろうかと思わせる。三岸は赤く塗りたかったのだと思う。