遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ブルゴーニュの麦畑/三岸節子

イメージ 1
 三岸節子 ブルゴーニュの麦畑 1980年

イギリスの風景画家ターナー(1775-1851)が、20ポンド紙幣の肖像になるという比較的新しいニュースは、気にも留めなかった方が大方だろう。私は小学生で読んだ夏目漱石の「坊ちゃん」でターナーという画家を認識していた。ターナーの描いた風景画より早く、画家の名前だけ認識していた。

おそらく、ターナーの写実的で端正な風景画は、赤シャツや野だいこならずとも日本人の心の風景画の原点にあると思われる。ターナーのような端正な風景画が、みなお気に入りだと思うのである。

今日ご紹介する三岸節子の作品は、「ブルゴーニュの麦畑」である。彼女75歳の時の作品で、これまたフランス在住時の作品である。

黄金色に輝く麦畑がまぶしくて、中央の影のような街並み(集落?)との対比が鮮やかである。正確な大きさはわからないが、この作品も縦が1mくらいの大作だった。青や赤が「三岸の色」といってもいいだろうが、風景画はこのようなバリエーションの絵画も多く存在する。

ターナーから200年後、75歳の日本人女性は、こんなに大胆な風景画を描くのである。漱石ですら想像を絶することではないだろうか。私は、ターナーより、近づきがたいほど野太い世界観を持つ三岸の作品の方に惹かれるのである。