堺雅人を初めて認識したのは、NHKの大河ドラマ「新撰組」(2004年)での山南敬助役を演じたとき。
声がユニークで雰囲気が新撰組らしくなくて、とても存在感があった。若いころからだてに舞台に立っているわけじゃないといった、役者然とした男だった。
声がユニークで雰囲気が新撰組らしくなくて、とても存在感があった。若いころからだてに舞台に立っているわけじゃないといった、役者然とした男だった。
堺扮する猪山直之は、加賀藩に仕える御算用者(ごさんようもの)。加賀藩が企業だとすると、御算用者たちが居るのは経理部で、藩の会計や資金の流れを一手に引き受ける大きな役所であった。
猪山家は、代々御算用者を輩出した家柄で、映画の中で算盤(そろばん)は猪山の「お家芸だ」というセリフも聞かれた。
猪山家は、代々御算用者を輩出した家柄で、映画の中で算盤(そろばん)は猪山の「お家芸だ」というセリフも聞かれた。
剣術はまるでだめだが、算盤や金勘定をやらせると藩では右に出るものがいないという堅物の直之は、帳簿から藩の不正資金を見つけ出して、「経理部」として役目を果たそうと奔走する。
このドラマは、「半沢直樹」のような、勧善懲悪ものではないが、加賀藩のために算盤ひとつでキリリと生きる直之演じる堺雅人の姿は、どこか半沢とオーバーラップする。
このドラマは、「半沢直樹」のような、勧善懲悪ものではないが、加賀藩のために算盤ひとつでキリリと生きる直之演じる堺雅人の姿は、どこか半沢とオーバーラップする。
一方、猪山家の借金にも目をつけ、家財や美術品や着物を売り、借金を返済する。武士なら、借金など踏み倒せばいいものを、と思うのだが、質素倹約の暮らしで家計を立ち直らせる石高180石の武家の暮らしが美しい。
直之を取り巻く、妻(仲間由紀恵)、父(中村雅俊)、母(松坂慶子)など、微笑ましいくらいの善人で、いぶし銀のような人たちで美しい。
こういう美しい人たち、今は映画で見るほかないのだろうかと、小さなため息が出る。
直之を取り巻く、妻(仲間由紀恵)、父(中村雅俊)、母(松坂慶子)など、微笑ましいくらいの善人で、いぶし銀のような人たちで美しい。
こういう美しい人たち、今は映画で見るほかないのだろうかと、小さなため息が出る。
大島ミチルの、しっとり感のある全編に流れる音楽も素晴らしい。
森田芸術は、ここにきちんといい形で遺っている。