遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

追悼 山田五十鈴

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         「蜘蛛巣城」の山田五十鈴


映画「流れる」の、私の記事の引用です。

とりわけ山田五十鈴の貫禄には感服する。
高峰秀子と親子の関係なのだが、実年齢差は7歳、
高峰の年齢設定は20代前半だとはいえ、山田の大人の雰囲気に圧倒される。

まあ、そういう存在感を感じさせる人でないと、花柳界に身を置き、置屋を切り盛りする女将
(この作品の女将は、うまく切り盛りできていないのだが)にはなれないと思う。

今の日本の女優でこれに匹敵する人は、坂東玉三郎くらいで、
玉三郎は女優ではないので、こんな女優は今はいないということである。

最後に、杉村と清元の弾き語りをする場面があるのだが、その歌と演奏にも感心した。
もともとその素養がある人なのか、演技なのか、
そのどちらが欠けても成立しない、迫真のシーンであった。

美人で貫禄があって演技力もあるんですから、山田五十鈴には太刀打ちできません。
おまけに、関西言葉はネイティブな「バイリンガル」女優ですから、演技の幅は、天の川に匹敵。

黒澤明の「蜘蛛巣城」「どん底」「用心棒」や成瀬巳喜男の「流れる」を観れば、
その底知れない演技の深みは一目瞭然。他の追随を許さない。

いい仕事が遺っていて大往生で、よかったですね。
これを機会にもう一度、彼女の作品をたくさんの人に観てもらいたい。

いい映画をありがとう山田さん、合掌。