遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

深夜プラス1/ギャビン・ライアル

イメージ 1

深夜プラス1    ギャビン・ライアル (著), 菊池 光(訳)

ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1)  価格: ¥714 (税込)




「ハード・ボイドゥドだど」というギャグで一斉風靡した、

トリオ・ザ・パンチというコントグループのリーダー内藤陳。

若い方はご存じないか、少年だった私はこのグループのコントが好きであった。

内藤陳(日本冒険小説協会会長)が経営するバーの名が「深夜プラス1」。


もちろん、ギャビン・ライアルの小説に因んだ名である。

ミステリが好きだと言う男で、「深夜プラス1」を読んだことがないというのは、

ま、「もぐり」と思ってもいい。



ストーリーは単純明快。


ブルターニュからリヒテンシュタインまで、フランスとスイスをほぼ横断して、一人の男を送り届ける。男に到着してほしくない連中は、ガンマンを雇って阻止しようとしてくる。そして、男はフランスの警察にも追われている・・そんな困難な任務を引き受けたのは、戦時中は情報部の工作員だったケインと、プロのガンマン、ハーヴェイ。相手方のガンマンも歴戦のプロだ。かくしてプロ対プロの熾烈な戦いが始まる。



導入部でケインが仕事を依頼されるのが、パリのカフェ「ドゥ・マゴ」。

パリ最古といわれるロマネスク様式のサン・ジェルマン・デ・プレ教会のまん前にある。

ここのフルーツ・タルトは、イチゴがたっぷりで、お奨めする。


冒険小説というかハードボイルドというか、渋い物語に相応しい導入部である。



ケインの相棒が、アルコール依存なのにプロのガンマンを生業とする、ハーヴェイ。

このハーヴェイのかっこよさが、男たちを魅了する。女もか。


そして、相棒はもうヒトリ、「懐の大きな」フランス車、シトロエンDSである。

車高を調節コントロールする仕組みが、油圧(ハイドロニューマチック)による、

優れたクルマである。 http://www.citroen.co.jp/timeline/02.html



主人公2人が、要人をシトロエンに乗せて、

フランスからリヒテンシュタインへ時間内に送り届ける。


あなたも、このシトロエンの同乗者になることをお奨めする。

キザとも言われかねないほど、忠実に仕事を完成させようとする主人公たちに、

感動されると思う。たぶん。




「命令」でライアンを連れ帰る指令を受けた、不条理の兵士たちが主人公であったが、

ケインとハーヴェイは、「命令」で動いたわけではなかった。


強いて言えば、「ロマン」と「ビジネス」と「アイデンティティ」が、

彼らを動かしたのであろうか。


どれも、きちんと生きていくうえで、大切なファクターである。