遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ドラマ「クイーンズ・ギャンビット」(NETFLIX)が素晴らしい!

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SNSで「クイーンズ・ギャンビット」というドラマの評判に接して、さっそく全7話を3日ほどで鑑賞。

チェスの天才的な才能に恵まれた少女の半世紀を綴った物語がドラマ「クイーンズ・ギャンビット」。

クイーンズ・ギャンビットとは、チェスの序盤の作戦の形式のことで、ドラマとは直接関係ない。また、本作はチェスのルールを知らなくても問題ないように作られていて、それだからこそ人気沸騰のドラマになった。

とはいえ、「チェック(王手)」と「チェックメイト(詰み=ゲームセット)」くらいは知っておいてもいいかと思う。

わけあって孤児院に預けられた9歳の少女ベスは、いつも地下室にいる用務員にチェスを教わりその類まれなる才能を見出される。そして、ある夫婦の養女に迎えられて、チェスの道を究めることができる環境におかれて、彼女の新たな道が開けていくことになる。

 『クイーンズ・ギャンビット』予告編 - Netflix

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本作「クイーンズ・ギャンビット」(本邦では未訳)は「ハスラー」(1961年のポール・ニューマンの主演映画)や「地球に落ちてきた男」(1977年のデヴィッド・ボウイの主演映画)を著したウォルター・テヴィスの原作のドラマ化で、エピソードは7話で完結するので、果てしなくだらだら続くドラマでないところがありがたい。

しかし、1960年代の時代考証がしっかりとなされていて、いまとなってはクラシックになった車やファッションやインテリアやホテルなどの公共的な場所などの描き方が綿密で手抜きがない。バックに流れる音楽の選び方も、各シーンにことごとくフィットしていて秀逸だ。

ノスタルジックでファッショナブルなおしゃれな感覚のドラマである一方、チェスの勝敗への執着心や孤児となった不幸な半生や多感な青春時代の悩みなど、主人公の屈折した内面をスルーしないでしっかり描写しているところが、能天気なドラマと一線を画していて素晴らしい。

常識的な一手ではなくて、見たこともない感覚的な驚きの一手を絞りだすことのできる主人公のベスを演じるアニャ・テイラー=ジョイが、はじめはいたいけなくて後に妖しくて、とても魅力的だった。いまもっともおすすめのドラマである。

 

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