遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

AV女優/永沢光雄

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AV女優    文春文庫
永沢 光雄 (著) 価格: ¥840 (税込)

AV女優 (2) 文春文庫
永沢 光雄 (著) 価格: ¥810 (税込)



知らない街で、カメラを首からぶら下げ、地図を見て歩く。

これが、京都や神戸や大阪の生活圏内では、何故かできない。

でも、その他の街では、なぜかそれができる。



とある夏、夏休みを過ごすホテルのプールサイドで読む本を買うために、

ホテルの近くのブックストアへ。

旅は、日常ではない。


日常ではないので、生活圏内の本屋で買うのに躊躇う類のものが、

ホイホイ買える。


私は、平積みになっていた「AV女優」を購入。

立ち読み段階で、タイトルから想像する内容のものでないことを確認していたが、

日常では買いにくい類の一冊である。

もっとも、今はネットで購入するのが日常であるが。


著者の永沢光雄の取材力が凄い。


取材対象の女優は、可愛い人が多い。

彼女たちが、AV女優になるまでの半生を、永沢に語る。

たいていは、酒を飲みながら、リラックスした雰囲気で語り始める。


彼女たちの多くは、いわば、現代版の「おしん」達であるが、

NHKの朝ドラで放映できるものではない。


すさまじい子供時代を過ごし、

手っ取り早くお金になる道を選んだ女の子たちがほとんどである。

お金を貯めて、幸せになる道を歩き出した女の子たちのノンフィクションである。



読み手は、彼女たちに、

憐憫を感じたり、逞しさを感じたりするであろう。


聞き手である永沢は、相手にそれ以上の感情を持ってしまうこともあり、

それを、包み隠さずしたためる。



愛すべき彼女たちは、自分の母親に毒を盛るほど、病んではいない。

幸せになってもらいたい、と思う。


著者の永沢は、まだ40歳代であるが、咽頭ガンで声を失った。

彼にも、幸せになってもらいたい、と思う。