遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

創作人形/小牧多賀子

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小牧さんの人形にはじめて触れたのが、

山田太一のドラマ「ありふれた奇跡」のなかでである。


仲間由紀恵加瀬亮が主演のドラマは、2人の過去が面白い設定になっていて、

主人公2人の父親の秘密も、面白い設定になっていて、

山田太一のドラマは、人間のもつ影というか弱い部分の描き方が、

私のような意気地のない人間には、なんだかほっとさせてくれるような温かみがある。


そのドラマの中で、仲間由紀恵の母親役の戸田恵子がつくっていた人形が、

きれいな姿でとても印象的であった。

ミケランジェロや運慶に迫る造形の美しさ、

コスチュームの中に肉体が、肉体の中に筋肉や骨格が感じられる、

そういった人形なのである。

その作家を調べると、小牧多賀子という名前に行き当たった。


小牧多賀子 プロフィールと創作方法

鹿児島県生まれ 
  女子美術短期大学日本刺繍科卒業 
  独学で人形制作を始める 
  個展多数開催、感慨招待出品 
  サンタフェドールフェスティバル、ニアダドールフェア出品 

小牧さんは、ほとんどデッサンをしない。球状の発砲スチロールを芯に、石粉粘土で肉付けし、頭部を形づくる。別々の人形の顔を三体同時につくり、それぞれの表情のバランスを客観視しながら、作業をすすめていく。顔ができると自然にポーズが決まる。そこで、洋装か和装かを決め、衣装に取りかかる。すべてを 「なんとなく」決めていく、おおらかさ。それが小牧流のつくり方だという。話しぶりにも、そのおおらかな薩摩おごじょの気質がのぞく。


デッサンなしで立体像をつくれるところが、運慶的な天才なんだろう。


かつて、NHKの里見八犬伝辻村ジュサブローの人形に出会って以来、

和の織物の質感と、創作人形の相性に心を打たれたひとりである。

ちりめんで皮膚を作り、魅力のある表情をこしらえ、

本物以上に見事な仕立てのコスチュームを身に付けると、

完成された芸術作品なのであった。


私は、ジュモーに代表される西洋人形は欲しくとも何ともない。

辻村や小牧のような人形が欲しいのである。