小牧さんの人形にはじめて触れたのが、
主人公2人の父親の秘密も、面白い設定になっていて、
山田太一のドラマは、人間のもつ影というか弱い部分の描き方が、
私のような意気地のない人間には、なんだかほっとさせてくれるような温かみがある。
きれいな姿でとても印象的であった。
ミケランジェロや運慶に迫る造形の美しさ、
コスチュームの中に肉体が、肉体の中に筋肉や骨格が感じられる、
そういった人形なのである。
その作家を調べると、小牧多賀子という名前に行き当たった。
小牧多賀子 プロフィールと創作方法 鹿児島県生まれ 女子美術短期大学日本刺繍科卒業 独学で人形制作を始める 個展多数開催、感慨招待出品 サンタフェドールフェスティバル、ニアダドールフェア出品 小牧さんは、ほとんどデッサンをしない。球状の発砲スチロールを芯に、石粉粘土で肉付けし、頭部を形づくる。別々の人形の顔を三体同時につくり、それぞれの表情のバランスを客観視しながら、作業をすすめていく。顔ができると自然にポーズが決まる。そこで、洋装か和装かを決め、衣装に取りかかる。すべてを 「なんとなく」決めていく、おおらかさ。それが小牧流のつくり方だという。話しぶりにも、そのおおらかな薩摩おごじょの気質がのぞく。
デッサンなしで立体像をつくれるところが、運慶的な天才なんだろう。
和の織物の質感と、創作人形の相性に心を打たれたひとりである。
ちりめんで皮膚を作り、魅力のある表情をこしらえ、
本物以上に見事な仕立てのコスチュームを身に付けると、
完成された芸術作品なのであった。
私は、ジュモーに代表される西洋人形は欲しくとも何ともない。
辻村や小牧のような人形が欲しいのである。