遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ラストダンスは私に/越路吹雪



紅白歌合戦の懐かしい映像を紹介する番組で、

越路吹雪の歌に感動。


田舎育ちの私の両親は、もちろん田舎育ち。

私の子どもの頃、紅白では、

両親は、美空ひばり松山恵子がお気に入りで、

片や、越路吹雪淡谷のり子については、

彼女たちの歌う時間はほとんどトイレタイム扱いで、

そのように両親は毛嫌いしていた。


そういう影響からか、

私は越路吹雪を、退廃的でアブナイオバサン感覚で見ていた記憶がある。


かといって、両親の好きな美空ひばりも、

子どもながらに傲慢なところが感じられて、

ちっとも好きではなかった。



中学生のとき、すでに今の身長があった私は音楽の先生に頼まれて、

1日千円昼食付きという破格の条件で、

先生宅に、大掃除の手伝いをしに行ったことがある。

先生ご夫婦は音大で声楽を修めた大変な方々で、

昼食休憩時に、TVに出ている歌手の品定めをしていらして、

越路吹雪の足元にも及ばない」

「越路はうまいよなぁ」

みたいな話をしておられた。


単純にも、中学生の私は、その会話を耳にしたときから、

越路吹雪に一目を置くようになったのである。


それから10年ほど時が経ち、

うちの奥さんと付き合い始めた頃、

奥さんも母親も、越路吹雪の大ファンだと聞く。

もし、私が先生宅へ大掃除の手伝いに行かなかったとしたら、

越路吹雪は変なオバサンのままだったかもしれないし、

奥さんの趣味に、げんなりしたかもしれないのである。


私の大のお気に入りは「ラストダンスは私に」である、

歌を歌うとは、こういうことをいうのである。
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