遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

告発/マーク・ロッコ

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告発 (1995年 アメリカ映画)



わが国の裁判員制度は、早くて来年夏にはスタートする。

私はその裁判に呼び出される確率の、

もっとも高い地域に住んでいる。

この制度、いろんな意味で、大丈夫なんだろうかと思っている。


さて、時は1941年。


この年56試合連続安打を記録した。

この大記録はいまだに破られていない。


ちょうど同じ年、ケヴィン・ベーコン演じる主人公は、

3年間閉じ込められていた独房をやっと出られたその日に、

アルカトラズ刑務所の大食堂で、

殺人を犯す。


その事件の若き弁護人を演じるのが、クリスチャン・スレーター。


長い独房生活で人格を著しく傷つけられたケヴィン・ベーコンは、

弁護人との会話さえままならない。

クリスチャン・スレーターは、何度も拘置所に通うが、

事件と関係ない「ディマジオの今シーズンはどうだ?」

というケヴィン・ベーコンの問いに答えられない。

ジョー・ディマジオを知らないのだ。


当時のディマジオを知らないということは、

シカゴ・ブルズの2度の3ピートが続いていた時期に

マイケル・ジョーダンを知らないことに等しい。

それくらい浮世離れしていたと言える。


しかし、この若き弁護士は、

アルカトラズ刑務所でケヴィンに対する虐待があり、

その迫害が彼を殺人に追い込んだことを立証しようと立ち上がる。


普通なら、名もなき囚人が刑務所で犯した殺人事件として、

すぐに結審を迎える流れ。

浮世離れしている若き弁護士は、

アンタッチャブルな「流れ」など気にも留めないで、

正義感を発揮して、この連邦刑務所の巨悪に立ち向かう。


アルカトラズの副所長役がゲイリー・オールドマン

どこをどのように切っても良心のかけらも出てこない、

極悪非道の副所長役の演技が素晴らしい。

演りたくはない汚れ役を、徹底してやるところが偉い。


とことん傷めつけられ堕ちていくケヴィン・ベーコンも、

正義しか見えずに突き進む爽やかなクリスチャン・スレーターも、

名演技を披露している。


これは実話に基づいた作品で、

この裁判がきっかけで、アルカトラズの地獄の独房が摘発され、

1963年には刑務所としての役割を終えている。


裁判員制度に招聘されたら、

私なら「流れ」を見てそれに乗って、

早々に職場復帰するのだろうな。