遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

笑う警官/佐々木譲

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笑う警官 佐々木譲 ハルキ文庫



スウェーデンのマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの

「笑う警官」は、世界に冠する名作であるが、

その同名小説、著者は佐々木譲


佐々木は直木賞の候補に挙がる実力者で、

今回は桜庭一樹の前に涙を飲んだ。


この作品は「うたう警官」として日の目を見たが、

「うたう(内部告発する)」という意味が一般的でないとして、

「笑う警官」と改題して文庫化されたという。


ちなみにマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの日本での版権は、

角川文庫にある。

春樹の「角川本家」に対する嫌がらせかどうかは分らないが、

ハルキ文庫の角川春樹のすすめで佐々木は改題したようである。



翌朝に開かれる「百条委員会」で、

北海道警の腐敗を告発しようとしている警察官、津久井

彼は明朝に「うたう」前に消される恐れがあり、

とある事件の容疑者として射殺命令が道警から出されている人物。


津久井と元同僚の現役警官佐伯とその仲間達が、

自主的な捜査班を組織し、

津久井の濡れ衣を晴らし、百条委員会へ彼を送り込むために、

夜の札幌を駆け巡るたった一夜の物語である。




しかるべき時期と目的地に、要人を無事送り届けるというストーリーは、

「深夜プラス1」にも似たスリルであり、

しかし、無血のハードボイルドであるところが鮮やかでもある。


捜査班リーダーの佐伯の静かなるリーダーシップと、

頭脳明晰な捜査活動は、胸のすく思いであり、

捜査班を構成する警官達の個性と感性も、

作者によって見事に書き込まれた作品である。