そんな話まったく知らなかったので、
驚きと心配で、「えっ」「へーっ」とうなってしまう。
三十郎を織田祐二が、
三十郎の宿敵、室戸半兵衛を豊川悦司が演じるという。
9人の若侍たちは、オーディションで選ばれたようである。
もし何の制約もなければ、私なら渡辺謙の三十郎役がいいと思うが、
他のキャスティングで死ぬほど悩み、お手上げ状態になるだろう。
森田は、黒澤のこの映画を見て映画監督になろうと思ったという、
その感性は素晴らしいし、彼の「家族ゲーム」がそれを証明する。
その後「お葬式」で監督デビューしたが、
森田芳光に感化触発されたことは疑いのないところであろう。
私も、森田の鮮烈な感性ににんまりとした覚えがある。
「三船は、相変わらずこの映画でもどこをどう切ってもかっこよくて、
非の打ちどころのない浪人侍を演じ切っている。」と書いている。
繰り返しになるが、
三船敏郎の、歩く姿・殺陣(たて)・話し方・酒の飲み方・顔の表情、
何から何まで、隅から隅まで素晴らしい演技である。
周りの役者も、ストーリーも、みな素晴らしい。
最後の決闘シーンはあまりにも有名だが、
それだけを取り上げるだけでは、この映画を賞賛できない。
むしろ私は、最後のシーンがなくても減点しない、
それまでに既に、満点に達している映画なのだから。
若い映画好きの方には、
先にぜひ黒澤&三船の「椿三十郎」を観ていただきたい。
最後の決闘のことは意識しないで、
娯楽大作を観るような気軽な感じで楽しまれたい。
黒澤&三船を1度観て、
DVDを買って黒澤オタクになって、
森田の椿三十郎を観なくとも、
それはそれでかまわないと思う。