私は、普段はほとんどノーメイクで過ごす。
だから、化粧品はおろか化粧筆も持っていない。私は男だし、ま、当然なのだが。
化粧筆のメーカーで、広島県のあの会社なんと言う名前だったかなぁと、
ネット検索で探し当てる。
白鳳堂であった。
以前何かのテレビで、
白鳳堂の経営者が、世界戦略に賭ける姿を追ったドキュメンタリーを観たことがある。
いまや、ハリウッドをはじめ、世界の一流メイクアップアーチスト御用達の一品である。
「ブラシ」と「筆」の違いがお解かりであろうか。
は、以下のように語っている。
毛先を切らず、たんねんに揃えていること。
毛先を活かすのが筆、切り揃えるのがブラシ、
という考え方のもと、
私たちが「筆――FUDE」という
言葉にこだわる理由がそこにあります。
つまり、一切カットしていない動物の毛を使用している。
だから、毛先が肌に引っかかる要素がないのである。
このメーカーが、英語でも「FUDE」と表記する拘りがここにある。
TVではハリウッドのメイクさんが、
「この筆で肌を往復して刷いても、往きも帰りもまったく変わらない感触なの」と絶賛していた。
普通のものは、ワンウェイが良い感触でも、アナザーウェイはそうではないのだそうだ。
耐久力がある筆先、つまり、長い間感触の精度が落ちない割りに、価格は妥当なもののようだ。
そのたたずまいに少し驚いていた。
普通の町工場のような本社だったからだ。
たたずまいの立派さと、そこの製品の品質は、必ずも一致しない。
愛しき人へのプレゼントや娘さんの嫁入り道具にいかがであろうか。
もちろん、ご自身へのプレゼントにもお薦めである。
実に気持ちよさそうな「筆」である。
白鳳堂の本社がある広島県安芸郡熊野町。JR広島駅から呉線で約12分、JR矢野駅を最寄り駅とする
人口約2万6000人の山間にある町だ。
古くから書道筆の一大産地として知られ、日本の筆の80%がここで生産されている。
熊野町には筆の製造企業が100社ほど点在し、書道筆をはじめ、画筆や化粧筆、その他様々な用途の
筆を生産している。
ここで白鳳堂が注目される点は3つある。具体的には
(1)メーキャップ市場という成長市場を自らの手でつかんだこと、
(2)その企業活動がグローバルに渡っていること、
(3)顧客の声を直接把握し、顧客にとって適切な価格にするために、流通構造の変革を断行したこと
――である。
簡単に言ってしまえば、卸業者を介さずに直販に踏み切ったのだ。
その結果、現在では世界の「高級化粧筆」市場で60%以上のシェアを持つに至った。
(1999年の日経ビジネス調査より)