遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

「ハンマー」/ストラディヴァリウス

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先だってニューヨークで、楽器として史上最高の高値で落札されたバイオリンのことを伝える

ニュース↓。

イタリアの名匠アントニオ・ストラディバリ(1644ごろ~1737年)が製作した「ハンマー」
と呼ばれるバイオリンが16日、ニューヨークで競売にかけられ、354万4000ドル
(約3億9000万円)で落札された。競売商クリスティーズによると、楽器では過去最高の
落札額だという。

 このバイオリンは1707年製作の名器で、米国を拠点に活動するバイオリニスト竹沢恭子さんが
貸与を受け、約1年前まで使用していた。落札者は明らかにされていない。


ストラディバリの「ハンマー」は、別名「ハンメル」。

落札額は史上最高だが、史上最高の楽器ということではない、

いいものは競売にかけられることなく、人から人へ、組織から組織へと、

綿々と受け継がれているからである。


ストラディバリの頃には、バイオリンに使用される良い木材がふんだんにあった。

ニスの材料も同様で、また、それを巧く配合した名人たちも数多く居た。

それと、300年の経年変化で最も良い音が出る時期と個体数の少なさが、

今ちょうど重なって、高額な取引価格となっているようだ。


このハンマーは、次に誰が弾くのだろうか。


良い楽器は、弾き続けられることでその音質を維持できるので、

持ち主は高名な演奏家に貸与する。

これが、「高名」な弦楽器の、一般的な保管方法である。


このあいだは、誰かさんが(敢えて名前は書かない)、

コインロッカーに入れておいたフルートを盗まれた。


コインロッカーに楽器を預けるという発想は、

バイオリニストには考えられないことである。

もちろんピアニストもそんなことはしない。



言われてみれば、ストラディバリは確かに良い音であるが、

言われなくても名演奏家の奏でる音は、良いものである。



今から300年後には、今作られている楽器が良い音を出しているような気もする。

我が国からも、良い職人が海を渡ってよく研究し、良い修行を積んでいる。

いいことである。



(画像は、かつて「ハンマー」を貸与されていた竹澤恭子である。)