遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

韓国ドラマ「私の解放日誌」を見て解放されました

Netflixで配信中の韓国ドラマ「私の解放日誌」を見ました。とてもいいドラマでした。

2022年に作られた見るべき韓国ドラマは、「第59回 百想芸術大賞」の授賞式Youtubeで仕込んでいました。
ちなみに「第59回 百想芸術大賞」の作品賞ノミネートが以下の5作でした。
『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』
『シスターズ』
『私たちのブルース』
『私の解放日誌』

上3本はすでに記事にしたとおり、とても楽しめた名作でしたが、『私たちのブルース』は途中で見るのをやめ、『私の解放日誌』は見るのをずっとためらっていた作品でした。

私の好きなのは、ハードボイルド、法廷もの、ヒューマン系、サスペンスもので、敬遠しがちなのが恋愛ものやファンタジー系で、『私の解放日誌』は一見恋愛タッチでしたので躊躇していました。

全16話もある『私の解放日誌』で、第一話を見終わった時点で、あまりにもメリハリがない謎めいた展開に途中で挫折しそうな予感もありましたが、「謎めいた」男の存在を放っておけなくて最終話まで付き合ってしまいました。

その謎めいた男の役をソン・ソックという俳優が演じています。
ソン・ソックとは「サバイバー 60日間の大統領」ではじめて出会いました。若手の大統領補佐官役が、びしっと決まっていて、どちらかというとのっぺりとした能面顔なのにもかかわらず顔で魅力的な演技が可能な俳優でした。

その後、「D.P. -脱走兵追跡官-」ののんびりした上官役や「殺人者のパラドックス」の能力のある刑事役などで彼の魅力に惹かれていました。
本作でも、主人公の5人家族が住むいなか町に転がり込んできたフルネームさえ明かさない謎の男を魅力的に演じています。

鑑賞の途中で、丹念に練られて手入れされた良い脚本だと私は妻と感想を交わしていて、全話見終わってから確認したら、本作は女性の脚本家が手掛けたもので、百想芸術大賞の脚本賞を獲得していました。

強敵ばかりの中で受賞したことが頷ける良い脚本でした。

俳優たちも魅力的で、年齢順に女・男・女で構成された20代から40代までの3人の兄弟が、閉鎖的な田舎からソウルに通勤しながら仕事や恋愛やを通して直面する人生の機微を見事に演じています。

3人兄弟だけじゃなくて、出演俳優たちのセリフが重くて深くて、見ている人たちも「解放」される言葉があふれていました。カメラワークも良くて感心しました。

華やかさやきらびやかさとは無縁ですが、落ち着いたタッチのヒューマンドラマとして「人生いろいろ」「生きてるだけで丸儲け」と、ほっこり・あたたかなドラマでありました。

 

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一宮散歩/三岸節子記念美術館

いつか訪れたいと思っていた一宮の「三岸節子記念美術館」に行ってきました。当美術館は節子の生家を尾西市(当時)が買い戻して1998年にオープンしました。

三岸節子は1905年に後の尾西市、現一宮市に生まれ1999年に亡くなりました。生涯現役の画家でありました。

もうかなり前ですが、私が最初に惹かれた作品は三岸が女子美時代に描いた「自画像」でした。今回はレプリカが展示されていましたが、私はこの作品の現物を神戸のは御影の香雪美術館で開催された「三岸節子展」(2016年5月)でお目にかかりました。

現在「自画像」は長野県立美術館:2024年3月16日(土)~5月12日(日)に貸し出し中で、その後、碧南市藤井達吉現代美術館:2024年5月25日(土)~7月7日(日)に巡回されるそうです。

三岸節子の作品と出会うたびに、その大胆な色使いと筆使いに憧れ続けています。とりわけ、彼女の風景画と静物画が私を激しく魅了します。

世の日曜画家の最後尾にいる私ですが、節子には近寄れないないので、真似してみようかと思っています。

今回は「花より花らしく」というコレクション展(入場料320円)が開催されていました。「花」以外にも、風景画や静物画の展示もあり、展示数は少ないもののたっぷり楽しめました。

名古屋城に行ってその近辺でお土産をあさりたいと言っていた妻も、三岸節子とその作品にすっかり魅了されたようで、一宮に足を運んだ甲斐がありました。

自画像 1925年(20歳) 油彩 3号 35.0×22.0

花   1989年(84歳) 油彩 20号 81.0×100.0

花・果実 1932年(27歳) 油彩 30号 90.0×72.0

アンダルシアの町 1987年(82歳) 油彩 30号 73.0×92.0 

細い運河 1974年(69歳) 油彩 30号 90.0×73.0

赤い地図 1980年(75歳) 油彩 40号 100.5×81.5

ヴェネチアの橋 1971年(66歳)油彩 30号 92.0×73.0

ブルゴーニュにて  1989年(84歳) 油彩 40号 81.0×100.0

白い花(ヴェロンにて)1989年(84歳)油彩 30号 73.0×92.0

豊田散歩/豊田市美術館・作品編

オイゲニア・プリマフェージの肖像 グスタフ・クリムト 1913/14年 油彩 140.0×85.0

豊田市美術館の収蔵作品は立派なものが多くて驚きました。

15年ほど前、仕事の一環で日本の自治体の財政状態を調べたことがあったのですが、愛知県の各都市(名古屋以外の自治体)は財政健全度が軒並み上位にありました。おそらくトヨタ自動車とその関連企業による法人税やそれらの企業で働く住民の所得税で潤っているのだと思います。

そのような健全財政下で、美術品のコレクションも充実しているのかもしれません。トヨタ自動車のお膝元の美術館、豊田市美術館の「パトロン」というべき企業や住民は、はかなり強靭な収益構造に支えられているように思います。

私が先週訪れたときには「2023年度 第3期 コレクション展 2024.01.20-2024.05.06」が開催中でしたので、特別展にはわき目も降らずにコレクション展のチケット(300円)を購入した次第です。

駐車場は無料で常設展は300円で、2時間はたっぷり楽しめます。ぜひお出かけください。

ということで、クリムト藤田嗣治岸田劉生エゴン・シーレ梅原龍三郎川合玉堂小林古径速水御舟横山大観サルバドール・ダリ濱田庄司奈良美智などの作品を堪能しました。

www.museum.toyota.aichi.jp

自画像 藤田 嗣治 1943年 油彩 23.0×15.0

自画像 岸田 劉生 1913年 油彩 45.6×38.0

オポルト・ツィハチェックの肖像 エゴン・シーレ 1907年 油彩 149.8×49.7

カール・グリュンヴァルトの肖像 エゴン・シーレ 1917年 油彩 140.9×110.5

少女アニーン 梅原 龍三郎 1908年 油彩ス 41.0×32.8

花飾りをつけた女 国吉 康雄 1932年 油彩 66.0×81.3

 

定まらないフォルムの絵画 ダニエル・ビュレン 1966年 アクリル 200.0×200.0